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『黒子のバスケ』の二次創作小説置場。pixivに投稿した作品を保管しています。腐向け。主なCPは火黒、赤降。たまにシモいかもしれません。

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彼は僕の性欲を刺激してやまない 4

 いよいよこのときがやってきてしまったようです。これからどのようなお仕置きが僕たちを待ち受けているのでしょうか。想像できません。仮にできたとしても、したくありません。赤司くんの制裁は中学時代に何度かお目にかかっていますが、痴情のもつれ(?)に起因したものはありませんでしたので、ノーデータです。僕と火神くんは膝に拳を置き、やや前傾姿勢のまま硬直していました。いえ、正確にはポーズを保ったままその場でがたがた震えていました。赤司くんは険しい目つきで僕たちをとらえています。少しの間沈黙が降ります。音の波など生じていないというのに、まるで全身に痛風の症状が現れたかのごとく、空気のわずかな揺れさえ激痛に感じられてなりませんでした。やがて、赤司くんが口を開きました。
「僕が降旗の部屋を出たとき、火神、おまえがいたわけだが」
「お、おう……」
 びくん、と火神くんがかわいそうなほど大きく体を震わせました。赤司くんとしましては、やはりその場に居合わせなかった僕よりも、実際に現場に存在していた火神くんのことが気になるようです。無自覚のジェラシーを静かに、しかし露骨に燃やしたまなざしを火神くんに向けています。
「おまえが待っていたのは、やはり降旗の異常を感じてのことか?」
「ええと……いや、その……」
 赤司くんの言う降旗くんの異常とは、僕に体をいじられたことが原因でお色気垂れ流し状態になってしまったことに相違ありませんが、先程までの赤司くんの話からすると、降旗くんは本日僕たちの家で起きた出来事の詳細を語ってはいないようなので、赤司くんは情報の全容を把握していないと思われます。とはいえ火神くんが降旗くんをわざわざ自宅まで送り届けたという不自然な状況に違和感はあるでしょうから、火神くんが何か知っていると勘繰るのは当然といえば当然です。実際、火神くんは降旗くんがあのような状態になってしまった顛末を知っています。しかし中途半端に情報が渡っているいま、下手にこちらから新情報を発信するのは誤解の元にしかならないでしょう。僕は火神くんの二の腕を引っ張って注意を引き、うっかりしゃべらないようにと目線で示すと、まずは赤司くんが降旗くんの様子についてどのようにとらえているのか聞き出すことにしました。
「赤司くん……あの、降旗くんの異常……とは?」
「いま話したとおり、今日の彼は普段とはかなり様子が異なった。……といってもおまえたちは普段のセックスでの彼の様子を知らないか。彼は繊細であるがゆえかときに病的に神経質で、対人恐怖症の疑いがある。セックスにおいてはことさらそれが顕著だ。行為における彼は常に消極的であり、要望を直接言葉にすることはまずない。しかし今日は妙に積極的だった。自己の意見を述べる姿勢は評価に値する。しかしそれは正常な判断力によって表明することを決定されたものについてだ。今日の彼は……そう、理性的ではなかったように思う。少々大袈裟な表現をすれば、心神喪失とでもいうべきか」
 赤司くんにとって、必死になって自分を誘うお色気むんむんな降旗くんの姿は心神喪失に当たるそうです。ひどい男ですね。自分だってごく短時間ながら記憶が飛んで自分の行動が把握できなくなるくらい興奮状態だったくせに。降旗くんが同じように性的興奮の極みにあったと、なぜ推測が及ばないのでしょうか。……ああ、息子くんが反応しないからですか。
「彼は自分がおかしいことに気づいていないか、または認めようとしなかった。まあそれはそうだろう、一時的であれ精神に異常を来している者がそれを正確に認識するのは至難の業だ。この件について彼に自己認識の甘さを問うのは酷な話だ。もっとも、僕もまたあのときは正常な判断力をいささか欠いていたと認めざるを得ない。部屋に入ったあと、彼は僕の常ならざる行動に驚きながらも、彼にしては積極的な応え方をしていた。僕はそのことに気づかなかったわけではないが、あまりに性欲を刺激されていたので、優先順位を誤ってしまった」
「あの……その『性欲を刺激された』って表現、どうにかなりませんか?」
 これまでずっと耐えていたのですが、とうとう堪えきれなくなって言ってしまいました。人生が終焉に向かおうとしている状況下で余裕だと思われるかもしれませんが、実際は逆です。心残りはできるだけ少なくしておきたいじゃないですか。言いたいことはなるべく言っておきたいのです。そう、言いたいこと……ああ、火神くん大好きです! 愛しています! 最後に一発きみとセックスしたかったです!! むしろやりながら死にたいです!! こうなったらやけくそですよもう!
「事実を叙述しているだけだが。何か問題が?」
「いや、あの……あまりに繰り返し出てくるので気になったというか……。わ、悪いってわけじゃないですよ?」
「ああ、確かに、西欧圏では同じフレーズの重複は幼稚な文とみなされるな。わかった、おまえの指摘を参考にしよう」
 いえ、そういう国語的な問題でもないんですけど……。なんでこのひとは逐一ズレまくりなんですか。
「本来なら異常を感じた時点で行為を中断すべきだったのだが、彼から匂い立つ何かが僕のリビドーをかつてない勢いで湧き立たせ――」
 性欲をリビドーに変えただけじゃないですか! ほぼ同じ意味ですからねそれ!? フロイト先生がどう説明されたのか詳しいことは知りませんが、心理学を離れた一般的な使い方では、だいたい同じような意味で用いられますからね!?
「僕はそのリビドーに突き動かされるまま彼とのセックスに夢中になってしまった。途中で幾許かの冷静さが冷水のように脳髄に染み渡り、やめるべきだと判断したあとの行動も、配慮のないものだった」
 放置プレイの残酷さにお気づきいただけましたか。
「部屋を出る前に、彼に対しもう少し説明すべきだった。……とは思うものの、僕自身、なぜ彼から離れるべきと判断したのか、その根拠がわからなかった――いまもわからないままだ――ので、説明のしようがなかったというのが現実なのだが。しかし、せめて彼に、僕を追って外に出るような真似はするなというべきだった。僕が部屋をあとにした時点では、彼は納得を示していなかったように思う。だからだろう、彼が尋常でない自分の状態を顧みず、僕が退室して間もなくアパートから出てきてしまったのは。あれは危険だった……。僕が扉の前にいたからその後説得することができたものの、もし僕が即座にアパートを離れていたら、彼は僕を探しに表を出歩いていたかもしれない。それがいかに危険極まりない行為かということを彼はまったく認識していなかったし、退室の段階では僕もそこまで深刻にとらえてはいなかった。実際にはそれはとんでもないことだった。部屋を出てきた彼は、数分前に室内で僕とセックスをしていたときよりもはるかに刺激的なにおいを纏っており、わずかに静まりかけた僕のリビドーの扉を一瞬にしてこじ開けんばかりだった――」
 うわぁぁぁぁぁぁ……! なんかまたハーレクイン開始しそうなんですけど!? もういいです、もうおなかいっぱいです! むしろ食中毒です!
 このあと赤司くんは、部屋の外に出てからの一連の出来事についてお得意の気色悪い官能小説もどきを繰り広げてくれました。僕はそのとき電話で彼らのやりとりを断片的に聞いており、何が起きたのか推測を交えた上でおおよそ把握していたつもりだったのですが……赤司くんのハーレクインフィルターを通して語られるルポの攻撃力は半端ありませんでした。火神くんなんてげっそりしすぎて衰弱死しそうです。現場を目の当たりにした上で、その場面における当事者から時間差で再現される当時の状況に、ダブルパンチを食らった心地なのでしょう……。ライフポイントが限りなくゼロに陥った僕たちに一切の容赦なく、赤司くんは降旗くんとうっかり青姦(というほどではないかもですが)しかけたときのシーンについて詳細かつねっとりと、実に気色悪く語ってくれました。もうやだこの宇宙人。
 ええと……僕たちがこのソファに着いて以来、かれこれ一時間半くらい延々熱弁を振るわれているのですが……。
 これって赤司くんが降旗くんを連れて部屋に引っ込んでから再び火神くんの前に出てきて、僕を電話で呼びつけるまでの間の出来事ですよね……。合計してもせいぜい三十分程度の時間だったと思うんですが……なんでこんなに濃厚なんですか。いえ、乳繰り合いの度合いとしてはどうやら多少性器に触れたくらいで、行為としてはたいしたことがなかったみたいなんですが、なぜその程度のことをここまでねちねちしつこく語れるんですかこのひとは。穴が開くくらい降旗くんに注目していないと無理ですよ。そして、僕たちにこんな詳細を語り尽くす必要性がどこにあったというのでしょう。だって要約すれば、「降旗にムラムラしたが、そのままセックスに雪崩れ込むと変なことをしてしまいそうだったから、途中でやめた」×2回、ということですよね。ここまで簡潔にされると状況が把握できませんが、時系列順に出来事を全部並べ、さらに自分の心境や降旗くんの体の状態を詳述する意味なんてないと思います。もしかして赤司くん、夜の降旗くんがいかに色っぽくてかわいいかを語りたかったんですか? 真顔で萌え萌えなんですか? きっとそうなんでしょうね……相手に対してとことんキュンキュンしていなきゃ、こんなくどくどと語り続けられませんよ……。もうこれ病気の域ですよ。恋の病をこじらせすぎています。それも傍迷惑な方向に。僕だって火神くんのかわいらしさと男らしさについて語らせたら夜が明けるどころか二十七時間テレビが終了するというくらいの自信はありますけどね!
 すべて語り終えた赤司くんは、心なしかすっきりしたように見えます。もしかして本当にマスターベーションに該当する行為だったのでしょうか。これまでの語り、全部赤司くんの公開オナニーだったんですか?……そう思うとますます気持ち悪くなりそうなので、この可能性はこれ以上考えないでおきます。
 赤司くんはふっと息を吐くとしばらく無言になりました。これまで生物化学兵器的な弾薬を搭載したマシンガンのごとくしゃべりまくっていたのが嘘のように。え、これ賢者タイム? いやいや、だからその発想はやめましょう自分。ただでさえ気色悪さで胃も胸もムカムカしているんですから。
 と、沈黙という名の一服を終えた赤司くんが、再び顔を上げました。その視線はやはり火神くんに刺さっています。
「火神、おまえは本当に降旗の様子がおかしいことに気づかなかったのか」
 この質問は答えにくい。まったく気づかなかったというのは明らかにバレバレの嘘になりますし、さりとて気づいていると答えたら、赤司くんの不興を買うのは目に見えています。赤司くん視点では、気づいた=降旗くんの色気に感づいたという解釈になるでしょうから。火神くんが降旗くんと一緒にいたというだけで不快感を覚えるようなひとですから、火神くんが降旗くんの色気を感知した上で自宅まで送り届けたとなると、赤司くんの中でどのような恐ろしい妄想が発生するか……。
 う、うまく凌いでください火神くん! 答え方次第では血の海です!
「あー、ええと……疲れ気味だなー、とは思ってたけど……。なんつーか、おまえとそういうことする体力があったとはびっくりだわ」
 ふおぉぉぉぉぉぉ!? こ、これは正解に近い回答ではないでしょうか!?
 一応肯定しつつ、でもおまえと違って降旗の色気にあてられるようなことなかったぜ、そんな発想微塵もなかったぜ、と示しているわけです。これなら赤司くんの嫉妬をかわせます。ナイス火神くん! 勉強できないだけで、頭は悪くないんですよね! さすがです僕の火神くん! 大好き! 僕のリビドーが刺激されそうです!
 僕が火神くんの華麗なる返答に感動し内心身悶えて息も絶え絶えでいる中、赤司くんはなおも険の残る表情で執念深く火神くんに尋ねます。
「おまえは彼がただ疲労しているだけと考えたのか」
「ま、まあ……」
「恐るべき観察眼のなさだ」
 心底がっかり、というように赤司くんは呆れと失望を全面に押し出した大きなため息をつきました。火神くんの握り拳にぴきりと青筋が浮きます。
「この野郎……おまえのニブチンぶりのほうが恐ろしいわ」
 気持ちはわかります。赤司くんの降旗くんに対する観察眼のなさは恐ろしいを通り越して仰天ものです。でも、結局それに救われたんですよ、僕たちは。
「まあまあ火神くん。あの場面で赤司くんが鋭かったら、いまごろきみ、暗い水の底だったかもしれないんですから。ここは彼のニブチンぶりに感謝しましょう」
 これは、首の皮がつながったと考えていいのでしょうか。赤司くんは降旗くんから事の詳細を聞いていないようですし、火神くんが降旗くんに欲情した可能性が否定されたことで(どの程度信じてくれたかはわかりませんが……)、怒りのオーラのようなものが鎮火されつつあるようです。火神くんもそれを感じたようで、大丈夫だよな? と視線で僕に確認してきます。いまだ予断は許しませんが、とりあえず大丈夫なんじゃないでしょうか、と希望的観測混じりに僕もまた目で答えました。
 しかしながら、このまま放置しておくわけにはいけません。降旗くんの問題も赤司くんの問題も結局何も解決していません。それに、赤司くんはなんらかの目的というか用件があって火神くんをここへ連行し、僕を呼び出したのです。いや、場所がラブホなのは僕と火神くんにセックスさせるためなのですが、それ自体が目的だったわけではありません。何か相談したいとか言っていたような……? なんでしたっけ? 赤司くんの長ったらしいハーレクイン・ロマンスのせいで何が何だかわからなくなってしまいました。
「あの、赤司くん、結局ここに僕たちを集めたのって、何のご用があったからでしょう? なんか相談事?……があったんですよね?」
「ああ、その件だが、実は――」
 と、話題を切り替えようとしたところで、お約束のように邪魔が入ります。
 くぐもった電子音が室内に響き渡りました。電話のコール音です。ごく一般的な呼び出し音で、この空間にいる三人ともが反応しました。僕の携帯ではない気がするのですが、いかんせん不明瞭な音なので判然としません。一応確認しようと立ち上がります。僕と火神くんの携帯は、脱いだ衣服とともにベッドに置いてあります。一度は脱ぎ散らかした服ですが、火神くんがきちんと畳んでくれました。赤司くんの分まで畳んであげちゃったんですよこのひと。やっぱり火神くんは母属性です。
 のっそりと椅子から腰を上げた僕らの眼前で、漫画における忍者的表現のような素早い影がよぎりました。
「光樹!」
 赤司くんはソファから立ち上がったかと思うと、まさに一足飛びといった動作で化粧台の前に置いてあった自分の鞄に飛びつきました。ほとんどタックルです。こういうところの家具には余分なものが置かれていないのでよかったものの、一般家庭の化粧台に向かってこんなことをしたら、あらゆる化粧品のボトルやヘアスプレー、メイクグッズが四散していることでしょう。らしからぬ慌てふためいた行動に呆気にとられている僕たちをよそに、赤司くんは旅行鞄のファスナーを完全に開放してひっくり返し中身をぶちまけました。おそらく携帯を探しているのだと思いますが、漁る手間も惜しいということでしょうか。
「あの……赤司くん?」
 声を掛けていいのか惑いつつそれだけ呟く僕に、赤司くんは一瞥をくれました。
「失敬。降旗から電話だ。無視はしないという約束だから出させてもらう」
 一言断りを入れてから、赤司くんは通話ボタンを押し、機体を左耳にあてました。重要案件について取引先からの電話を受けた敏腕ビジネスマンのような真剣な表情をしています。
「光樹、どうした。……いまか? ああ、時間なら大丈夫だ、気にしなくていい。さっきはすまなかったな。……いや、怒ってなどいない。それは僕がきみに聞きたいことだ。明確な理由を何ひとつ告げないまま、きみに一方的に命令をして立ち去ってしまったのだから」
 わー……めっちゃ優しい声。ハーレクインとはまた別種の気持ち悪さに悪寒が走ります。喧嘩した彼女のご機嫌を取る彼氏のような度の過ぎた甘さが含まれる赤司くんのトーンと口調に、僕と火神くんは自身の二の腕をさすりました。こんなときまで動きがシンクロする僕らはナイスカップルだと思います。
 しかし、それにしても……赤司くんが全面的に自分の非を認めるとは。惚れた弱みとはこのことでしょうか。いや、どう考えたって赤司くんが悪いですけど。煽るだけ煽ってお預け食らわせるとか。むしろいままで電話して来なかった降旗くんの自制心が天晴です。そういえば、降旗くん、結局赤司くんが去ってからいままでどうしていたのでしょうか。とてもではありませんが、何事もなかったかのように日常に戻れたとは思えないのですが……。
 胸騒ぎを覚えたところで、ふいに赤司くんの声音に変化が生じました。
「光樹? 光樹? 大丈夫か?」
 ど、どうしたんでしょうか。降旗くんに何かあったのでしょうか。わずかに心臓が高鳴るのを自覚しましたが、電話口にいないので状況が一切わからないためどうすることもできず、とりあえず応対者である赤司くんの動向に注意を向けました。
「光樹、落ち着け。大丈夫だ」
 赤司くんはことさら優しい声音でそう言いました。何があったのかはわかりませんが、姿の見えない降旗くんのことがきっと心配でしょうに、不安なところは微塵も見せません。このあたりの自己制御や演技力はさすがだと感心しました。と、しばらくなだめの言葉を掛けていた赤司くんが、再びすまなそうな言葉を紡ぎました。
「……そうか。悪いことをした。だが、いまきみのところに行くことはできないんだ。すまない。……いや、大丈夫だ、時間ならあるが。どうした?……ああ、そうか、体がつらいのか。かわいそうなことをしてしまったな。……わかった、可能な範囲で協力しよう。そうだな、まずは目を閉じるか、明かりを落とすか、布で目隠しをするかして、視界を暗くしろ。余分な情報は遮断して、僕の声に集中しろ。いいな?……ああ、いい子だ。きみは確か左手のほうが使いやすいんだったな。光樹、左手を開いて顔の前にかざせ。指をぴんと張る必要はない。リラックスして。親指と人差指の谷間に指先を這わせてみろ。……できているか? そうか、ちゃんとできているか。ではカーブに沿って人差し指の先端まで舌で辿ってみろ。指先まで行ったら、爪を唇で隠すようにくわえて。口の中に入れてはいけない。前歯の手前で留めるんだ。唇の裏側と歯の間でやんわり挟みこむように……ああ、うん、聞こえた。もう一度、音を立てて聞かせてくれ。では次は、僕が音を立ててきみに聞かせよう。もう一回、指を唇に含んで……」
 うわぁぁぁぁぁ!?
 こ、こっ、このひと、なんかテレフォンセックスはじめたんですけど!? え、これテレフォンセックスですよね!? 直立不動のままですけど! しかも超真顔! まるっきり主将の顔ですよこれぇ! 組織の責任者として粛々と仕事をこなすときの顔です。いかにも仕事のできる男といった雰囲気を纏いつつ、しかし首から下はパンイチです。とんでもなくシュールな姿で、赤司くんは降旗くんとの電話を続けます。ていうかなんでこのひと直立姿勢を保てるんですか。結局一発も抜いていないっぽいので、普通ならとっくに前屈みになっていると思うのですが……やっぱり身体及び精神の構造が人間とは違うのでしょうか。
「できたか?……無理だったか。ではもう一度やってみろ。大丈夫だ、きみならできる。僕も手伝うから。怖がることはない――」
 赤司くんの声がいままで聞いたことのない種類の甘さを帯びはじめました。これはいよいよ情事モードということでしょうか。
 ……ひぃっ、まさかの生観戦ですかこれ!? 赤司先生にリビドーという名の創作の閃きが生まれる瞬間を目撃させていただけるのですか!? 大迷惑です、やめてください。
 僕の願いむなしく、赤司くんと降旗くんのテレフォンセックスは中断どころか盛り上がりに向かっている様子です。幸い電話なので距離をとって耳を塞ぐなり音の届かないところに逃げ込むなりすればダメージを回避できると思うのでそうします。そんなわけで僕はいまから火神くんを連れてバスルームに立て篭もろうと考えています。いえ、エロい目的ではありません。お風呂場でシャワー音を立てていれば赤司くんのテレフォンセックスの声を遮断・マスキングできますから。僕たちふたりの精神衛生を守るために必要な措置だからそうするだけです。本当ですよ? だから一緒に行きましょう、火神くん! ね?

 

 

 

 


 

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