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『黒子のバスケ』の二次創作小説置場。pixivに投稿した作品を保管しています。腐向け。主なCPは火黒、赤降。たまにシモいかもしれません。

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番外編・たまにはこんなチャレンジを 2

 焦らすでも、さりとて慌てるでもなく、お互いの衣服を脱がせ合い、生まれたままの心もとない姿で向かい合った。着衣のままというのも嫌いではないが、体を隠すものをすべて取り払うほうが降旗は好きだ。体のどこに触れても相手のぬくもりを感じるのは心地よく、また安心するものだった。
 少し日焼けした肌の上を、粘膜の赤みがかすかな粘性を伴う液体とともに這っていく。降旗は、自分の右の人差し指を含む赤司の唇、そしてその間からちろちろとのぞく意外に厚みのある舌から目が離せなかった。神経の分布が細かい四肢の先端である指先は感覚が鋭敏だ。背や肩にキスをもらうときには落としている刺激も、指ならば拾い上げる。唾液の湿り気と、表皮より少し高い粘膜のぬくみに包まれる指そのものの快感に加え、赤司がそのような感覚をもたらしているという視覚情報が、降旗の頭蓋の中に広がり脳髄を痺れさせた。端正な顔の中でひときわ目立つ双眸が不敵に細められ、あやしげな微笑とともに指に舌を這わせ、またときに根本までくわえてわざとらしくじゅっと音を立てて吸い上げる。先刻まで彼に施されていたフェラを、擬似的に再現し、見せつけられているかのようだ。官能的ではあるが、けっして下品ではなく、どこか硬質で透明な美しささえ感じさせる。それでいて、その美は性的な雰囲気と反発せず、むしろ調和し、相乗効果のように刺激をもたらしてくる。赤司がときに持ち芸のように連発する「性欲を刺激される」というフレーズを、しかしいまは笑えないなと降旗は思った。赤司の目元のちょっとした表情の変化にも、官能を煽られてならない。己の指が彼の口内に入り込み、そして出てくる。人差し指と中指を入れ替え、またそのふたつを同時に含む。繰り返されるその動作は、まさに性交の代替だった。
「あっ……んっ……」
 指を舐められているだけなのに、息が上がる。それどころか声まで漏れる。いまさら羞恥に悶えるということはないが、赤司の怜悧な相貌が濫りがわしくゆがむ光景がもたらす背徳に呼吸が乱れるのが苦しくなり、降旗は左手で自分の口元を覆った。己の手の平の内側で、ほう、と熱い吐息を漏らす。
「んっ……」
 ちゅぽん、と音を立てて指が引き抜かれる。濡れた指先を掠める室内のかすかな気流の流れに冷感を覚える。蛍光灯に照らされた指がぬらぬらと光っている。爪は透明なマニキュアを塗ったかのような艶を帯びていた。降旗の指先を挟み、赤司と視線が交わる。口を半開きにして呆然とする降旗を一瞥した赤司が、口角をわずかにつり上げた。
「こんなものか……と言いたいところだが、これでは少々無理がある。小道具に頼るのが賢明か」
 彼は壁際に用意したローションのボトルを手に取ると、キャップを開け、まるで主婦が目分量で直接醤油の瓶から鍋に中身を注ぐかのように、だばだばと手の平に水たまりをつくった。ボトルを置き、指先にローションをたっぷりと絡ませる。
「最初だけ自分でしておこう。……見たいか?」
「え……」
「隠れてやるつもりもないから、どのみち見せることになるが」
 微塵の羞恥もなく、むしろ降旗が戸惑うさまを楽しむように、赤司はクッションを置いた壁を背に緩い角度で体を倒すと、膝を立てて迷いなく開脚した。そして、液体に濡れた右手を自身の足の間に移動させる。あいにく体の影になって降旗からはよく見えないが、彼の手が小さな円を描くように動いているのはわかった。手首の角度が深くなると同時に、彼の喉から声には至らないくぐもった吐息が漏れた。
「は……」
「うわ……」
 直接視覚的に確認はできなかったが、彼が体内に自身の指を埋め込んだのは明白だった。なんて過激な光景だろう。降旗はある種の畏れさえ感じ、ゆるゆると首を左右に振りながらあとずさりしかけた。
「駄目だ、光樹。逃げるんじゃない」
 赤司の言葉に縛られるように、降旗は小さな動きさえ止めた。赤司は降旗に直接働きかけることはせず、自分のすべきことに没頭した。ローションのボトルを左手で掴むと、シーツに大きな染みができるのも構わず、内部を潤した。
「ん……あ、ぁ……」
 小さかった水音は、やがてぐちゅぐちゅと淫猥な音の波に変わり、空気に波紋を広げた。腕の動きがぴたりと止み、その先にある手も静止したことが見て取れた。緩慢に、慎重に引き抜かれる。濡れた手指が胸の高さまで上げられると、くるりと反転され手の平が上になった。その人差し指がちょいちょいと緩く前後に動く。おいで。彼の指が招いている。降旗は磁力で引き寄せられるかのごとく、躊躇なく彼に近づいた。
「あとは……どうすればいいか、わかるだろう? 知らないということはあるまい」
「う、うん」
「向きはこのままにしよう。抱くときのきみの表情を見せてもらおうか」
「うぅ……緊張する……」
 赤司は肩甲骨のあたりを壁際のクッションに置き、わずかに上体を起こして仰向けになった。先ほどと同じように膝を立て、降旗の眼前で脚を開いてみせる。その潔さに降旗は心が震えた。痺れたといってもいい。ああ、やっぱりこのひとはかっこいい。俺、いつもこんなひとに抱いてもらってるんだ。場違いな感動が胸を突く。
――光樹、もうちょっと脚を開けないか?
――こ、こう……?
――それでは膝の角度が深くなっただけだ。もっとこう、左右に膝を下ろす感じで……。
――わ……せ、征くん、は、恥ずかしいよ……。
――いつものことだろう。別に僕はからかったりしないが?
――ま、真面目なのは真面目なので恥ずかしいんだよ。
 過去何度交わしたかわからないセックスでのやりとりを思い出す。回想がよぎっただけで頬が赤くなる気がした。赤司には幾度となく体に触れられ、脚の間にも当然刺激をもらっているわけだが、いまだに羞恥心が消えることはない。だってやっぱり恥ずかしいじゃないか、あんなところを文字通り開けっぴろげに見せるなんて。とはいえ、羞恥に膝を震わせながらのろのろと脚を開くとき、その狭間にある場所をかわいがってもらえることへの期待が抑えきれないのもまた事実であるのだが。
 自分とは対照的にまるで含羞をうかがわせない赤司を、しかし降旗は不思議だとも物足りないとも思わない。彼ならばそうあって然るべきとさえ感じている。彼の堂々とした態度に心を鷲掴みにされる。かわいらしい表現を用いれば、胸がキュンとする、といったところか。こんな彼が自分を抱いてくれている。その事実が何よりも感慨深く、降旗の心を満たした。
「さ、光樹……」
 乾きかけた降旗の指をいま一度自らの唾液で濡らしてから、赤司は彼の手首を掴み、自分の脚の間へと導いた。降旗は震える指でこわごわとその場所に触れた。少しだけ力を込めて押すと、ローションでしっとりと濡れたそこがひくりと収縮した。思わず指を引っ込めるが、赤司に手首を固定されているため、ほとんど距離は取れなかった。
「ほ、ほんとにいい?」
「いままでも指を挿れるくらいはしただろう。いまさらためらうこともあるまい」
「で、でも……」
 指で触れた経験があるとはいえ、慣れているとは言えない。うっかり傷つけてしまうのが怖くて、降旗はそこに指を差し込むことができず、指の腹でぐっぐっと軽く押すに留めていた。んっ、と赤司が鼻に抜ける息とともに苦笑を漏らす。
「その位置で留まっていられると、焦らされている感がすごいんだが。きみは意外といじわるなのか?」
 いたずらっぽく問う赤司。からかっているのは明白だが、降旗は途端にぶんぶんと首を横に振った。
「ご、ごめん! そういうつもりじゃ……。で、でも、きみが俺にしてくれるときも、だいたいいつもこんな感じだよ? 俺、いつもむずむずしてるんだから。その……早く挿れてほしくて」
――あっ、あっ……そ、そこ……。
――怖いか?
――う、ううん……大丈夫。あ、あのさ、征くん、も、もうちょっと……。
――すまない、性急だったか。慌てないよう気をつけよう。
――や、違っ……せ、せいくん……。ふぇぇ……。
――光樹? 痛かったのか?
――そ、そうじゃないよ……あ、あの……は、はやく……。
 赤司にほぐしてもらうととき、皮膚と粘膜の境目を念入りに指の腹で撫でられ、縁の襞のひとつひとつを柔らかく揉まれる。緩い快感はマッサージのような心地よさがあるが、その先を弄られることで得られる強烈な快楽を知っている体は、彼の指をいまかいまかと待ち侘びている。入り口を優しく押されるのは確かに気持ちがよいけれど、それでは全然足りない。もっと奥へ来てほしい。早く。早く。あの焦れったさといったらないのだが、変なところで鈍い赤司は降旗が物欲しさに身悶えるほど、ゆっくりと触れようとする。いじわるをしているわけではなく、単純に気遣ってのことであるのがわかるだけに余計たちが悪い。おねがいはやくいれて。身も世もなくそんなふうにねだったことは一度や二度ではない。
「おや、そうだったのか。それは悪いことをしていたようだ。確かにこれは……なかなかもどかしいものがある。さっさと挿れてほしいな」
 降旗が羞恥心との葛藤の末にようやく搾り出す台詞を、赤司はいともたやすく口にした。降旗に意趣返しなどという大それた発想ができるはずもなく、彼は従順に赤司の希望をかなえた。つぷり、と人差し指の先を差し込む。
「そうはいっても、俺はゆっくりしてもらうの、嫌いじゃないんだけどね。確か焦れったいんだけど……丁寧にしてもらえると、大事にしてくれてるんだなって感じて」
「そうか」
 控えめに指を動かしながら語る降旗に、赤司が上機嫌そうに笑う。降旗は彼のなかに第二関節まで埋め込むと、軽く左右に指を振ったり円を描いたり、また抜いては再び差し込んだ。その間、赤司は時折かすかな声の乗る吐息を漏らす程度だった。気持ちよさそうではあるが、肩でも揉まれているようなリラックスした表情だ。彼が快感を得ているらしいことに降旗は安堵しつつも、ちょっぴりため息をつきたくなった。同じような状況下で、自分はどんな顔をしているんだろう。きっとこの時点でぐずぐずに蕩けてるんだろうな。征くん征くんって、湿っぽい声ですがることすらあるくらいだから。
「ん……あ、あ……もう少し進めていい。きみの指くらい、大丈夫だから」
「う、うん……」
 降旗は慎重に指を差し込んだ。第二関節が完全に隠れ、ほぼ付け根まで埋まる。緩く関節を曲げ、内壁をこするように上下に移動させようとした。と。
「んっ……」
 ふいに赤司が眉根を寄せて目を閉じ、反射的といった動作で顎を上げた。わずかに苦痛がうかがえる。降旗は慌てて動きを止める。
「ご、ごめん、痛かった?」
「いや、痛くはない。さすがに違和感はあるが。大丈夫だ、続けてくれ」
 狭い内部を指の腹で優しく掻く。少しずつ指先に力を込め、内壁への圧を強くする。
「……あっ」
 広げられていた赤司の脚が持ち上がり、浮いた踵がバタと揺れた。
「せ、征くん?」
 うろたえる降旗に、赤司がまばたきをしながら微笑んだ。先程より瞳が潤んでいるように思えた。
「心配いらない。気持ちよかっただけだから」
「そ、そっか。このへんだったよね。……も、もうちょっと触ってもいい?」
「ああ、頼む」
 許可を得ると、降旗はその場所をぐっと押し込んだり離したりした。内部から受ける圧の強弱に連動して、赤司が呼吸のリズムを崩す。
「んあ……はっ……」
 膝やつま先がびくびくと小さく跳ねる。うわ、えろい。でも、感じていながらも自制しているらしい控えめな動きに品を感じる。きれいなのは顔の造作だけじゃないんだなー、としみじみ思いつつ、俺はこういうとき絶対グズグズでみっともないんだろうな、と降旗はちょっとへこんだ。
――やっ、あ、ああああぁぁぁぁ! そ、そこ、やぁっ……!
――光樹? ここ、気持ちよくないか?
――うっ、えっ、ふぇっ……。
――光樹、光樹? 大丈夫か?
――やだぁ……おかしくなる……そこ、へん……ふぇっ、えっ、えっ……。……うぁっ、や、やだぁっ……あ――――っ。
 内部を慎重に弄る赤司の指がいいところを押し込むとき、降旗はいつだって鳴き叫びたくなる。いや、実際に悲鳴を上げることも珍しくない。じっとしていられなくて、背中に柔軟性の許す限りのアーチをつくって身をよじり、強烈な快感をそれでもやり過ごせないときは、彼の肩にしがみつきながらばたばたとせわしなく脚を暴れさせる。激しい波に襲われている最中は自覚がないが、ぼろぼろと涙をこぼしていることは、自分の顔が押し付けられていたであろう彼の肩口が濡れているのにあとから気づくことで悟った。我ながらとんでもなく見苦しい姿を晒しているんだろう、それも彼の目の前で、思い切り。そんな想像がよぎれば、ため息のひとつも漏らしたくなるものだ。この状況下でそんな無礼なことをするほど馬鹿でも勇者でもないけれど。
 でも仕方ないじゃん。ほんとに気持ちいいんだから。声出ちゃうよ。泣きたくもなるよ。征くん、俺の気持ちいいところ上手に押さえてくるんだもん。でも、それだけじゃないよなきっと。征くんの指が入ってきてるんだって考えると、体がきゅってするっていうか……そう思うだけで気分が盛り上がっちゃうんだ。自分で自分を煽っちゃってるところもあるよなあ。……あ、やべ。なんかうずうずしてきたかも……。征くんに触ってもらってるときの感覚、思い出しちゃった。
 赤司の中に埋め込んだ自分の指をかたちを感じながら、彼にされているときに体内で知覚する彼の指のかたちを連想してしまい、降旗は体の奥がじんと熱を持つのを感じた。いま自分が触れている彼の体内の場所と同じところが疼いてならない。爪が立たないように気をつけながら内壁を引っ掻いてやると、彼は呼吸の中に声を混ぜ、足の指の先を丸めたり開いたりした。目に見える反応はあるものの、静かな印象を受け、降旗は釈然としない気持ちになった。
「あの……前から思ってるんだけど、きみのここって、俺がきみにしてもらっているときにきゃんきゃん叫んじゃうのと、その……同じ場所、なんだよね……?」
 降旗が尋ねると、視界を閉ざして快感を味わっていたらしい赤司が億劫そうにまぶたを持ち上げた。
「そのはずだが」
「なんか征くん、余裕そう……。俺、きみにしてもらうと気持よくておかしくなりそうで、泣いちゃったりするのに。俺、やっぱ下手なんだね……」
「なんだ、鳴いてほしいのか?」
 にやり、と赤司が口角をつり上げる。鳴かせてくれてもいいんだけど? 挑発してくる。だが、それに挑戦心を駆り立てられる精神をもっていない降旗は、肉食獣に狙われた気分でひっと息を呑んだ。
「そ、そういう意味じゃ……」
 たじろぐのは、赤司相手にそんなこと畏れ多くてできませんという心境のほか、もうひとつ思うところがあってのことだ。
 ココは――やばい。
 何がどうやばいか説明しろと言われてもうまく言語化できる自信はないが、とにかくよろしくないのだ、ココは。いや、これでは語弊がある。よくないなんてことはない。むしろすごくいい。陰茎への刺激で満足していた自分のもの知らずぶりを笑いたくなるくらい、ココへの刺激は圧倒的でたまらないものだ。しかしそれゆえ危機感を覚えることがある。この場所で感じるオーガズムは絶大で、底も天井もうかがい知ることができない。快感とともに訪れる幸福感は、やがて心身を恍惚で包み込む。頭が真っ白になったかと思うと、まぶたの裏側で無数の光が点滅する。呻きとも叫びともつかない人の声が遠く聞こえる。それが自分の声であることは、その時間にはきっと気づいていないだろう。気持ちよすぎてどうにかなってしまう――それはあの快感の坩堝に放り込まれている間、ありふれた比喩などではなく、切迫した現実だった。これ以上ないくらい追い詰められているのに、快楽の到達点が見えない。自分はどうなってしまうのか。狂ってしまうんじゃないか。恍惚の愉悦の中、恐怖感が湧き上がる。そう、怖いのだ。ココで感じる過度の気持ちの良さは、得体の知れない恐怖を呼ぶ。
――やっ、やぁ……やめておねがい……。も、もうだめっ、これ以上は……おっ、おかしくなる……。こわいっ……こわいっ……うわぁぁぁぁ……っ、やっ、やあぁぁぁぁぁぁぁっ!?
――落ち着け、もう何もしていない。
――ふぇっ? だ、だって、なんかぞくぞくしてっ……あっ、ああっ……! やっ、た、っ、たすけてぇっ……!
 一度大きな波が来ると、外部からの刺激をなくされたところで、即座には治まらない。シナプスが発狂してしまったのかと疑いたくなる。赤司がローションでぐっしょり濡れた手を見せてくるのは加虐心からくる揶揄ではなく、本当に何もしていないことを証明するためであろうが、照明を反射する指先さえ、その状態の降旗には強すぎる刺激だ。また、彼がすでに直接的な刺激を与えていないのに、自分の体が激しい快感に震えているという事実に一層の恐怖を駆り立てられた。何もされていないのにこんなふうになっているなんて、自分は本当におかしくなってしまったのではないか。この波は本当に治まるのか。逃れられなかったらどうしよう。実際の持続時間は短いのだが、あの一瞬一瞬においては時間は限りなく引き伸ばされ、それゆえ恐ろしさもまた甚大だった。確かに体は気持ちよいのだが、激しすぎるがゆえ、もはや苦痛に近かった。
 快感に喘いでいるとはいえ、降旗が深刻に怖がっていることは伝わるようで、はじめて本気で惑乱して泣きだしたときは、さすがの赤司もうろたえていた様子だった。あの彼をびっくりさせるなんて。でも、俺すごいとは思えない。というか思いたくない。記憶は飛び飛びだが完全に覚えていないわけではないので、当時の自分の情けない姿を思い返すと恥ずかしさで死にそうだ。それから何度か試行錯誤を重ねて――その間に降旗は何度かパニック寸前の快感に襲われてやはり泣いてしまったが――度が過ぎない刺激の強さがふたりともわかるようになり、それからはあまり怖がらずに快楽を追うことができた。意識的とはいえ、ここまででストップという線引きがあるのは安心だった。
 赤司はどれくらいの刺激が一番気持ちいいんだろう? これまでもこうやって内部に触れる機会はあったが、過ぎた快感に本気でどうにかなってしまうのではという恐怖を覚えた経験のある身としては、あまり無遠慮なことはできない。彼相手にやり返してやろうなんてとんでもないとの思いのほか、あんな怖い目に遭わせるのは忍びないと切実に感じる。それに、自分は赤司より不器用だから、うっかりで何かあったら怖い。
 そんな降旗の心境を察しないのか、あるいは見通した上で現状を楽しんでいるのか、赤司がふふっとちょっぴりいじわるげに笑う。
「極まっているときのきみの声はすごいからな、再現するのは少々骨かもしれない」
「や、やめて!」
「冗談だ。しかし、きみはちょっと遠慮がすぎると思う。もう少し強く触れてほしい」
「い、いいの?」
「ああ」
 要望に応えるかたちで降旗は内壁を心持ち強く押してみた。ほんの少し赤司の息が詰まるが、すぐにくすぐったげな顔になった。今度はリズムでも取るように人差指と中指を使って交互に軽く叩く。よく彼がやってくれる方法だ。断続的な波の強弱が気持ちよくて、降旗は好きだった。
「んっ……あっ、あっ……」
 赤司は左手で自分の前髪をくしゃりと掴むと、ふるふると首を左右に振った。制止のサインではなく、立ち上る快感を逃がす先を求めての行動であることは理解できた。きっと自分もそんなことをやっている。彼みたいにさまにはならないだろうけど。
「征くん色っぽい……」
 やっぱりココ、気持ちいいんだ。ちょっと感慨深げに降旗は思った。自分が彼に触られてぐちゃぐちゃのどろどろに蕩けてしまう快感を得るのと同じものを、彼も持っている。彼の体のなかにもそんな場所がある。当然のことなのだが、ひどく淫猥な印象を受けてしまった。
 彼の媚態に官能を揺さぶられる一方で、その姿に、彼に鳴かされている自分のイメージが重なる。その瞬間、カッと頬が熱くなった。と同時に、意図的に無視を心掛けてきた体の内側の疼きが急激に大きくなり、背筋を震わせた。触ってほしい。挿れてほしい。彼の指でなかを掻き回されたい。そして、その気持ちよさに存分に酔いしれ喘ぎたい。彼に触れられる感覚を思い出すだけで、奥がきゅっと締まる気がした。
 それが顔に出ていたのか、快感に潤みながらも赤司が不可解そうなまなざしを向けてきた。
「光樹、どうした?」
「いや、あの……お、思い出しちゃって」
 気まずさにどぎまぎしながらも、降旗は素直に答えた。スマートに取り繕う自信なんてなかったから。
「思い出す?」
「自分が征くんに……こうしてもらってるときのこと」
 これから抱こうとする相手に告げるようなことではないと自覚しつつ、彼に抱かれることへの思慕を抑えきれず、降旗はおずおずと言った。赤司は一瞬きょとんとしたあと、納得したとばかりにうなずき、にやっと前歯を見せた。
「触ってほしくなったか?」
「う、うん。きみにここ押されると、俺もう、昇天するんじゃないかって気になるんだ。気持ちよすぎて死んじゃうかもって思うくらい」
「実際そう口にしているぞ」
「え!?」
 まじで? と思ったのも束の間。
――ああぁぁっ、や、やだぁ……し、しんじゃうっ……たすけて、たすけて征くん! やだぁ、おっ、俺、しんじゃうっ……。あっ……! やあぁぁぁぁぁっ!
 絶頂の苦しさに鳴き叫びながら助けを求める自分の声が脳裏に蘇った。
 言ってた! 確かに言ってるよ俺!
 赤司の前で晒した痴態というか醜態は数知れないので、いまさら恥ずかしがるのも奇妙な気がしないでもないが、指摘されるとやはり羞恥が込み上げる。当たり前ではあるのだが、彼に余さずしっかり記憶されているかと思うと、穴を掘って埋まりたい気持ちになる。しかしその一方、彼に抱かれている自分を思い出して、ますます後ろがじくじく熱をもって疼くのもまた確かで。もういっそ抱いてよ。開き直りではなく、ストレートな欲求としてそう思った。
 しかし赤司は今日あくまで降旗が自分を抱くことを求めている。降旗の腕を掴んで引き寄せると、もっとこちらへと視線で示す。赤司はほぼ寝転がっている体勢のため、必然的に彼に覆いかぶさるかっこうになる。頭上の降旗の顔を挑戦的な笑みをたたえた瞳が舐めるように見つめてくる。と、彼の右手が降旗の腰に回る。それは丸みを伝いながら、足の間に到達した。彼の指が、くぼみをくっと押した。
「あっ……はっ……」
 降旗の口から思わずこぼれた短い喘ぎには、確かな期待の響きがあった。が、赤司は微笑みとともに無慈悲に告げる。
「そんな顔をしても駄目だ。挿れてあげないから」
「せ、せいくん……」
 降旗が恨めしげに名前を呼ぶ。赤司は自らが発した挿れてあげないという言葉を守りつつ、入り口付近でやわやわと指を遊ばせた。そのたびに降旗はびくびくと震え、赤司の横についた腕はいまにもくずおれそうだった。倒れ込むことを許可するように、赤司は左手を降旗の後頭部に添えると、ゆっくりと引き寄せ、その唇に触れるだけのキスをした。
「きみはこちらに関して僕よりずっと物知りだ。さて、きみは僕をどこへ連れて行ってくれるのかな?」
 至近距離で見つめてくる赤司の両の瞳にもまた、欲と期待の光が鈍く宿っていた。赤司の手が後ろから引いたかと思うと、降旗自身をきゅっと柔らかに握り込んだ。





 

 

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