女体化注意!
黒子が女の子設定の火黒で、タイトル通りの話ですので、ご注意ください。しょっぱなから男女のベッドシーンがあります。エロくないですが、苦手な方はお気を付けください。
設定というか前提(ノリだけで書いたので、細かいことは考えていません)
・黒子の名前とか口調はそのまま。
・ふたりとも社会人。すでに出来上がっている。火神はアメリカ暮らし、黒子は日本暮らし。
・黒子が火神を訪ねてアメリカにやって来ている。滞在中は火神のアパートでいちゃいちゃ。
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ちゅ、と控えめな音が一瞬を聞いたかと思うと、水の流れる音が頭蓋に反響した。といってもその音は部屋には響かない。内側から内耳をくすぐるような感覚だ。
「んっ……」
「んー……」
「っは……」
「はぁ……」
お互い斜めに噛み付き合うようなかたちで唇を合わせていた黒子と火神は、呼吸と嚥下のために顔を離した。距離を取ろうと遠のく火神の顔を、黒子の双眸が見下ろしている。目線がいつもと逆転しているのは、黒子がベッドに膝を折って座り、火神が片腕を支えに寝そべっているからだ。黒子は自分の唇を濡らす二人分の唾液を舌先で舐め取ったあと、火神の唇の端からほんの少しこぼれている薄紫色の液体を指で拭ってやった。黒子の片手には味気ない寸胴なグラスが握られており、中には三分の一ほどに減った赤ワインが水面を小さく揺らしている。自分の曲げた足の横でいつもより少し熱い呼吸をしている火神を見つめながら、黒子はグラスの縁に唇を寄せ、わずかに傾ける。少し渋みのある味と芳香が口内を満たす。しかし含んだのは一口だけ。それを飲み下すことはせず、上体を倒して火神の唇に再び自分の唇を寄せる。火神はちょっとためらって見せたが、すぐに口をうっすらと開いた。粘膜の触れ合う小さな音が立ったかと思うと、生ぬるいワインがじんわりと浸透するような緩やかさで口の中に流し込まれてくるのがわかった。親鳥と雛のようなやり方で酒を口に運ばれて、どれくらい経つのか。アルコールが回りはじめた脳でぼんやりと考える。
「もう一口いかがですか?」
いつの間にか顔を離した黒子が、グラスを揺らして見せながら問う。火神は自分の頬に手の甲を当てて体温の上昇を感じると、
「いや、ちっと休憩」
と言って、それまで自分の上半身を支えていた腕を伸ばし、寝転がる。当たり前のように、頭部は枕ではなく黒子の太腿の上に置かれた。一旦は背を向ける格好で横になった火神だが、すぐに体を反転させ、顔を黒子の腹にくっつけるようにして逆向きになった。そしてその細めの腰に腕を巻き付け、さらにぎゅっと自分の顔を押し付ける。黒子は、そんな火神のちょっと紅潮した目元を微笑ましく見下ろしつつ、赤い髪に指を差し入れ優しく撫でてやった。
「甘えんぼですねえ、火神くん」
「うるせー……」
ぼやきつつ、火神は体を丸めると、ますます黒子にひっついた。口で拗ねながらも甘えた行動を取る火神は、図体に相反してひどく子供っぽい。かわいいかわいいと胸中で彼のプライドを傷つけそうな言葉を繰り返しつつ、わかりきった質問をする。
「酔ってます?」
酔っているに決まっている。でなければ火神はこれほど露骨に懐いてきてはくれない。だから、彼のこんな姿が見たくて、意外とアルコール耐性の低い彼に強めの酒を飲ませてしまう。アスリートとして節制意識の高い彼は素直には飲酒の誘いに応じてくれないので、翌日のスケジュールに差し支えがないときは、こうしてベッドに彼を寝かせ口移しで飲ませるのが黒子の楽しみとなっていた。誰の目にも明らかな誘惑を含んだ飲ませ方で誘ってくる彼女を突っぱねるほど、火神は不甲斐なくはないし、石頭でもない。
返事のない火神の頬をつんつんと指でつつくと、
「火神くん? 寝ちゃいましたか?」
「寝てねえ」
ちょっとだけ不機嫌そうな、けれどもやっぱり甘ったるい不明瞭な声が返ってくる。
「そうでしたか、失礼しました。でも、お眠ですか?」
「んー……ちょっと。ってか、おまえが酔わせたんだろ。俺があんま強くないの知ってるくせによ」
つん、と火神の指が黒子の頬へと伸びる。あまりにものろまな動作なので避けるのは簡単だが、黒子はあえてそのままつつき返されてやった。そしてその手を握ると、軽く立てられた火神の人差し指を口に含んだ。ぴく、と指が一瞬小さく痙攣したが、退くことはなかった。黒子はそのまま舌の先を少しだけ出してその指を舐めた。ん、とくぐもった声が火神から漏れる。
「酔った火神くんはかわいいですから。こうやって僕にべったり甘えてきて」
「ほっとけ元凶。飲ませたのはおまえだろ」
ぶっきらぼうに返しつつ、火神は腕を引いて寝返りを打つと、今度は仰向けになった。膝の上にある火神の幾分赤い顔を見下ろし、黒子が微笑む。
「火神くんにべったりがっつり甘えられるの、好きなんです。でも素面だと照れちゃってここまでならないでしょう? だからつい飲ませてしまいます」
「おまえも飲めよ」
火神は黒子の手のうちにあるグラスを取ろうと、再び腕を伸ばした。黒子は、駄目です、こぼれます、と言いながら、酔って動きの定まらない火神の手を簡単にかわす。
「僕は飲んでもあまり意味がないので。相当飲まない限り顔にも出ないからおもしろくないでしょう」
「俺のが弱いってのがなあ……」
「生まれつきの体質ですから、仕方がないです。それに……」
と、黒子は再びワインを口に含んだ。そして曲げていた片足を少し浮かせ、強制的に火神の上体を起こさせると、またしても唇を近づける。よせ、と言いつつ火神は相手の唇を自分のそれで受け止めた。わずかな量を口移ししたあと、黒子は平生と変わらぬ白い面のまま言った。
「僕はお酒はともかく、きみには簡単に酔ってしまいますから。おあいこでしょう?」
「俺も同じ条件なんだから、全然フェアじゃねえだろ」
「いいえ――」
黒子は文句を垂れる火神の頭を抱き込むと、まだ酒気の残る唇を彼の唇に押し付けた。そして元から薄く開かれていた口にぬるりと舌を差し込んだ。くちゅ、くちゅ、と互いの舌がたわむれのような追いかけっこをする。そうしてしばらく遊んだあと、名残の糸を引きながら顔を離した。
「――この件に関しては絶対僕のほうが酔いやすいですよ?」
ぺろ、と垂れかけた銀糸を舐め取る黒子。火神は黒子の首の後ろに手を回すと、今度は自分から彼女の頭を引き寄せた。
「……するか?」
「はい、したいです」
即答すると、黒子は鼻先を火神の頬に軽くこすらせた。至近距離で火神がささやく。
「俺もしてぇ。すっげえ久々」
「交渉成立、ですね」
「ばぁか、最初から成立してただろ」
「はい」
黒子はグラスにわずかに残ったワインを煽ろうと口に近づけた。が、火神がその手首を掴み制止する。
「よせ。あんま飲ませられたら眠くなるだろ。そしたらできねえぞ」
「それは困ります。今日は朝までずっと起きていたいのに――きみと一緒に」
そう答えると、黒子は火神にあっさりグラスを手渡した。火神はそれをナイトテーブルに置くために腕を側方に伸ばしつつ、反対の手で黒子の肩を押した。グラスの底が木製のテーブルの表面を叩く小さな音と、とすん、と黒子の体がマットレスに沈む音が響くのは同時だった。
先刻までとは視線の位置を入れ替え、火神が黒子の脇に片肘をつく。覆いかぶさるように体を近づけると、黒子の体は火神の影にほとんど隠れてしまった。天井から注ぐ照明が逆光となり、火神の顔が暗く映る。黒子は自分の意志で視界を閉ざすと、口を薄く開いた。今度は相手から体温を与えられるのを待つ。やんわりと唇に噛みつかれ、やり返すように軽く食んでやった。どちらの口内でたわむれを繰り広げるか争うように、舌と舌が甘ったるい攻防を展開する。その一方で火神の手が黒子の服の裾から潜り込み、インナーの隙間をくぐってゆく。黒子は左腕を火神の首に引っ掛け、もっと近くへ、と誘いながら、自らの右手でブラウスのボタンを下から外していった。前が完全に開かれたときにはすでに、ずり上げられたキャミソールが鎖骨のすぐ下のあたりでたわんでおり、下着に覆われた胸の膨らみが露わになっていた。
「先に脱いでおいたほうがよかったでしょうか」
「もうちょいこのままがいい。あとで脱がせたい」
「わかりました、お願いします。あ、火神くんは僕が脱がせますので、勝手に脱がないでくださいね」
「ん」
平和なやりとりを交わしつつ、黒子は肩甲骨の上端あたりを支点にして背中を逸らすようにして上体を少し浮かせた。ベッドとの間にできた隙間に火神の手が滑り込み、背面のホックに指が掛けられる。金具を外す音など立たないが、ワイヤーやアジャスターの締め付けが緩み、わずかな解放感を得る。役割を果たさなくなったブラジャーのカップが少し浮き上がり、アンダーバストに隙間ができる。火神はワイヤーの湾曲に人差し指を引っ掛けると、上に向かってずらした。仰向けのため乳房の肉が重力によって横に流れ潰れてしまっているので、弾けるようなお目見えとはならない。が、そこには確かな膨らみがあり、ワイヤーから外した指で痛くない程度に軽く突くと、乳房に指が沈んだ。そのままほかの指も広げ、やんわりと握る。
「あっ……」
黒子は息の中に小さな声を含ませた。自らブラとキャミソールを掴んで上に引き上げ、火神の前に両胸をさらす。そしてもう片方の手で火神の後頭部を押さえ、あらわになった右胸へと近づける。肩甲骨を引き締め、背中を反らせることで、胸をつんと前に突き出す。右胸の先端が、火神の口元を掠める。さあどうぞ。言葉にしてはいないが、明らかなサインだ。すぐに乳首に濡れた感触と、吸啜の感覚が走る。ぞく、と鳥肌が浮くのがわかる。しかしここだけでは足りない。黒子は彼の右手を取ると、まだ刺激をもらっていない左胸へと導いた。
「あっ、あっ……」
先端を指先で少し強めに摘ままれる感覚に、遠慮なく声を上げた。刺激はまだまだ緩いものの、海を隔てた遠距離により長らく触れ合っていなかったため、久方ぶりに直接与えられる感触への歓喜は強いものがある。黒子は反らしていた背の緊張を解き、再びぽすんとマットに沈んだ。火神の背に両腕を回すと、コットンのシャツの裾から手を侵入させ、背骨のラインを人差し指の腹でなぞりながら、手の甲と手首に引っ掛けたシャツをずり上げていく。ついでに開いた膝を立て、彼の胴を軽く挟む。四肢を使って火神を内側に抱き込むのは、彼を独占できているようで少々の優越感があった。やがて、濡れた感触と髪の毛が触れることによるくすぐったさが胸から腹へと下りていった。色気があるとは言えない、どこにでも売っていそうな濃紺のジーンズのウエストの留め具はいつの間にか外され、すでに大きな手が侵入している。黒子はぽんぽんと火神の肩を軽く叩き注意を引く。無論、制止するためではない。
「火神くん……こっちも。口、寂しいです」
自分の下唇を指さしながらねだる。手は下半身に伸ばされた火神の手首を固定し、そのまま続けるよう言外に示す。アルコールの香る火神の舌を招き入れ、深いキスを続ける。緩められたジーンズの内側では、火神の指が下着越しに敏感な場所をゆるゆると刺激していた。
「濡れてる」
「はい。はあ……よかったです。久々すぎて枯れてたらどうしようかと。……んっ!」
やがて、わずかに湿ったクロッチの縁が真ん中へ向かって寄せられ、指先が直接触れる。下から上へと、水分を帯びたへこみをたどるように人差し指が走り、上端に近い位置でぐり、と強めに押され、反射的に膝が内側へ閉ざされようとする。もっとも膝頭が火神の脇腹を両側から押すだけだったが。上下移動が何回か繰り返されたあと、すでに程よく潤った場所へ中指が差し込まれる。
「ん……」
唇はまだ合わせられたまま、黒子の鼻から濡れた声が抜けていく。少し息苦しい――と黒子が感じると同時に、火神は唇を遠ざけ、再び胸へと下ろし、ぴんと尖った乳先を舌でつついた。ちゅ、と吸われるような音がするが、この水音が自分の体のどのあたりから響いてくるのか、黒子には判然としなかった。
「あ……火神くん」
「うん?」
黒子は顎を引いて唇を離すと、上目遣いで火神を見つめた。体は明らかに興奮しているが、色の薄いふたつの瞳にはいまだ理性の光がしっかりと窺える。
「ちょっとお聞きしたいんですが」
「なんだ? 痛いか?」
酒だけではない熱っぽい声で火神が問う。
「いえ、それはないです。久々に火神くんに触ってもらえてすごく気持ちいいです。ええと、お聞きしたいというのはですね――」
と、黒子は一息入れたあと、
「僕が火神くんの子供ほしいって言ったら、火神くんヒきますか?」
「……は!?」
脈絡のない質問に驚いた火神は、ムードをぶち壊すことこの上ない素っ頓狂な声を上げた。いや、脈絡がないというのはおかしい。パートナーとの合意のもと、これから行おうとしている行為は、本来まさに『そういうこと』が目的なのだから。しかし、思いもよらぬ質問は、アルコールの回りつつあった脳を一瞬で目覚めさせるに十分だった。
「火神くん?」
いままでの濃厚さはすっかり鳴りを潜め、火神は手を黒子から引っ込めると、無意識にちょっぴり距離を取った。
「ちょ、ま、まま、待て、おま……いきなり何なんだよ」
すっかり動揺に陥った火神がどもりながら不審そうなまなざしを向ける。どこか慌てているようにも見受けられる。一方、黒子は普段通りの澄ました調子で、大真面目に答える。
「いや、実は僕のおっぱい一生懸命吸ってくれてる火神くん見てると、赤ちゃんにおっぱいあげてる気分になっちゃうんです」
「な、なんか微妙な言われ方だなそれ……」
「女性は大なり小なりそういう感覚あると思いますよ? 男性なんていくら大きくたってある意味子供ですから。かわいいものです、ふふ」
余裕ありげに語る黒子に、火神は男として若干がくっと来るところがないではない。しかしそれ以上に、彼からすればとても小さく映る体に反して、この包容力があるからこそ甘えたくなるのだと納得もする。
「まあ、そうかもしれんが……で、何だよ、授乳してる気分になったから、子供がほしいとかいう発想が出てきたのか?」
「いえ、そこまで短絡的ではありません。ここのところずっと考えていたんです、自分が子供を持つことを」
「そ、そうなのか」
ぐ、と両の拳を握り締めながら話す黒子に火神は気圧される。火神とて未来図をまったく描いたことがないわけではないが、直近の未来についてそこまで具体的な構想はないので、黒子の発言には驚きを隠せなかった。物理的に遠く離れている間に、黒子が何か思い悩むようなことがあったのかと少々不安になる。が、彼女は相変わらず平然としたままだ。
「やっぱりヒきます? あ、結婚を迫っているわけではないので、あまり重く考えないでください」
「いや、ヒかねえけど……っつーかむしろ、そう思ってもらえるのは、その、嬉しいぜ? 好きな女に、その、自分の子供産みたいって、思ってもらえるのはよ」
照れつつも素直に答えるが、目線は泳いでしまう。と、先ほど黒子から取り上げたワインの残るグラスが目に入り、はっとする。勢いよく黒子のほうを振り向くと、
「な、なあ、もしかして、で、できた……とか? 今日、おまえアルコール控えてた、よな……?」
ついさっきまでまさぐっていた黒子の白く平らな下腹部へ視線を落としつつ、震えの隠せない声で恐々と尋ねた。希望と計画を持って実践しているカップルは別として、世のたいていの男はこういう質問をするとき、戦々恐々とするものではないかと火神は感じた。もちろん、彼女がうなずいたとして、何が何でも困るというわけではないのだけれど。