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『黒子のバスケ』の二次創作小説置場。pixivに投稿した作品を保管しています。腐向け。主なCPは火黒、赤降。たまにシモいかもしれません。

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思い出にかわるまで サイドストーリー2-2(赤司)

 一応の気遣いとして、部屋を出て行こうかと申し出る赤司。
 どちらのうっかりのせいか、あるいはただの悪い偶然が重なったのか、下半身がよろしくない事態に陥っている黒子。
 最善は、赤司に帰ってもらい、その後自分で気兼ねなく処理をすることなのだろうが……。
 黒子は赤司に、帰ってください、とは言えなかった。それは言ってはいけないと思ったし、言いたくないとも思った。事故でいろいろと面倒くさいことになってしまった自分にわざわざ会いに来てくれた昔の仲間を追い返すようなことはしたくない。そうすることは、現在までかろうじて存続しているつながりを自ら断ち切るような気がして怖かった。自分が過去に頼らざるを得ないことは理解している。
 もっとも、どのみち赤司がいま帰ることはないのだが。黒子の記憶からはすでに抜け落ちているが、母親が所用で家を空けているため、この家には現在黒子と赤司しかいない。自宅なのでよっぽど大丈夫なのだが、心身に不安を抱える黒子をひとりにすることはなるべく避けたい。赤司はいわば留守を預かるようなかたちで滞在しているので、家の敷地から出て行くわけにはいかないのだ。
 そんなことは思い出せないし考えつきもしない黒子は、とにかく赤司に退いてもらおうと、おずおずと口を開いた。
「え、ええと、いまからというのは……さすがに。だってまだお昼ですよ?」
 昼だからできないという問題でもないのだが、とりあえず思いつくまま言ってみる。当然赤司には通用しない。
「夜まで耐えるのはかなりつらいと思うが」
「あの、ええと……」
「まあ元はと言えば僕がうっかり刺激したせいだからな……責任は取ろう」
 黒子の動揺などきれいに無視し、赤司は下着越しに黒子の中途半端に反応しているものを握った。
「ちょ、ちょ、ちょっ……! あ、あああああ、赤司くん! あっ、ああっ……!」
 ぐ、と他人の手で握り込まれる感覚が恐ろしい。すっかりひるんだ黒子の手は、もはや赤司の手首のあたりをさまようだけになっていた。
 するりと下着の内側に手指が潜り込む。
「怖いか?」
「い、いえ……」
「痛みは?」
「だ、大丈夫、です」
 何かのマニュアルを読み上げるような平坦さで、短く確認される。端的かつわかりやすい質問に、なんでこんな事態になっているのかという思考が発生する前に、ついありのままを答えてしまう。
 もはや何が起きているのか把握しきれない黒子のどぎまぎした様子をどう受け取ったのか、赤司はさらにとんでもないことを聞いてきた。
「何なら口でしようか?」
「へ?」
 口? 口でするって?
 瞬間的には本気で何のことだかわからず黒子が目をぱちくりさせていると、ご丁寧に赤司が言い直す。
「別に僕は構わないが、フェラチ――」
「うわー、うわー、うわー! 駄目です駄目です赤司くん!」
 まさかの単語。黒子は珍しく声を張り、すんでのところで掻き消した。意味のある行為とは思えなかったが、あの赤司の声がそんな言葉を紡ぐなんて、にわかには信じ難かった。聞いてはいけない禁断の呪文を聞いてしまう、そんな気さえした。
 が、赤司は不思議そうに首を傾げるだけだ。
「テツヤ? 嫌いなのか? フェ――」
「だ、だからっ、駄目ですよ! 赤司くんがそんな言葉言ったら!」
 今度は先ほどより早めに遮る。必死に訴える黒子に、赤司はいったい何が言いたいんだとばかりに眉をひそめている。
「なぜ」
「なぜって……だって、赤司くんだから」
 黒子にだって理由はわからないが、とにかく耳にしてはいけないし、口にさせてもいけない気がしたのだ。これが別の人間――いまどこで何をしているのかはわからない、あるいは忘れてしまったが、たとえば青峰あたり――の口から飛び出すというなら、ここまで大慌てはしないだろうが、赤司は駄目だと思った。彼の声がこんな単語に音を与えることに、罪深ささえ感じる。
 頼むからこれ以上変なことを言わないで下さいと黒子が思っていると、赤司はそれを察したわけではないだろうが、口の話題からは離れてくれた。
「まったく意味がわからないが……とりあえず手だけでいいということか」
「じゅ、十分です……」
「遠慮は必要ないが?」
「ほんとに十分ですから……勘弁してください」
 と答えてから、黒子ははっとした。この言い方では、結局現状打破にはならないというか、このまま赤司が手で処理をするのに任せるという意味になるのでは。失言だったか。いや、誘導にはまったのか。黒子がどう弁明しようか考えあぐねていると、
「さて、どうしようか」
「はい?」
「嫌ならやめるが」
 ここになって赤司が逃げ道をくれた。もっとも手を引っ込める気は毛頭ないようだが。何のつもりかと訝りながら、黒子が警戒心をあらわにした目で赤司を見る。
「いまさら選択肢をくれるんですか」
「嫌だと言えばこれ以上はしない。言わなければ承知とみなす」
「え……」
 思わず漏れた声は、期待が外されたという意味ではない。やめてくれならともかく、嫌だは言いづらいと黒子は感じた。前者はただの制止だが、後者は感情的な拒否の表れとして相手を否定しているように響く。選択肢を与えているようで実は一択しかない状況をつくっている赤司がずるいのか、それともそう解釈してしまう自分がおかしいのか。もしかして自分はこの先を期待しているのだろうか――そこまで考えが至ったとき、黒子はひどく戸惑った。嫌だとは思っていない自分がいることに気がついて。
 しかし、彼にこんなことをさせるのはよくないという思いはある。心情的に言いづらいが、ここは赤司の提示通り嫌だと言うしかあるまい。そう判断した黒子の唇が「い」のかたちに引き結ばれようとしたとき。
「返事は了解した。任せるといい」
 一足遅かったようだ。赤司は黒子が沈黙という回答を示したととらえ、そのまま手を進めた。少し強められた刺激に黒子の体がびくりと跳ねる。自分の喉から小さく声が漏れるのを他人事のように聞きながら、黒子は呆然としていた。いったい何がどうしてこんなことに……?

*****

 壁に背をつき足を広げて座る黒子は、赤司の肩に手を掛けてはいるものの、されるがままになっていた。肩を掴む指はわずかに赤司の服に食い込んでいる。制止しているようでもあり、また縋っているようでもあった。
「ふっ、あ、あ……」
「痛い?」
「い、いえ……」
 他人の手で与えられる刺激は、自分で加えるものとはかなり違って感じられた。感触そのものの違いもあるが、自身の動きによらないため、どんな刺激が来るかという予測ができないことが興奮を煽る。黒子とて自分で処理をした経験は当然あるし、事故で心身に不自由をきたしたあとも、生殖機能への直接的影響はなかったし自慰ができないような身体上の制限はなかったので、記憶にはないがおそらくときどきしていたとは思う。現在の自分の体の反応から、前回からの間隔がかなり空いていたのだろうという推測は立った。こういうことも手帳に記録して管理したほうがいいのだろうか……黒子は改めて自分の体、いや頭が情けなくなった。覚えがないだけですでに管理している可能性もあるのだが。
 浅く速くなる呼吸の中で、黒子は途切れがちに尋ねた。
「あ、赤司くん……なんで、こんなこと……」
「嫌か?」
「そういう問題ではなくて」
「怖い?」
「それも……ちょっと違うような。危害を加えられているという感じはしませんし。なんていうか、純粋に疑問なんです。なんですかこのわけのわからない事態は」
 黒子と目を合わせないまま赤司が淡々と答える。
「僕が引き起こした事態だから、責任は持ちたいと思ったんだ。同じ男として、こういうのがきついのはわかるしな」
 と、こんな状況なのに、黒子はきょとんとしてしまった。
「え、赤司くんも、こういうのわかるんですか? というか、そもそもするんですか? 赤司くんが?」
 心底不思議そうに聞いてくる黒子に、赤司は顔を上げて眉をしかめた。
「当たり前だろう。僕をなんだと思っているんだ。不能だとでも?」
「いえ、滅相もない。ええと……不能ではなく不要というか。霞食べて生きているタイプの人かと」
「心外な。僕はごく普通の人類だぞ」
「人類なのは百歩譲っていいとして……ごく普通というのは嘘でしょう」
「目からビーム出したり口から砲撃したりなんて、絶対にできる気がしないが」
 真顔で茶化すようなことを言う赤司。が、黒子もまた大真面目な顔で尋ねる。
「赤司くん……ビーム出せないんですか?」
「おまえな……」
「能ある鷹は爪を隠しているんですよね。赤司くん優秀ですから」
「おまえの中の『優秀』のハードルがいかに高いのかがわかる発言だ」
 くす、と小さな笑みを漏らしながら、少し強めに握り込み、先端を指先でぐりっと押すと、黒子から短い悲鳴が上がった。
「中学のとき、それなりに猥談にも参加した気がするんだが……僕の記憶違いか?」
「あれ、参加してたっていうんでしょうか? いつも澄まし顔だったように思います」
「表情が豊かなほうではないだけだ。おまえも似たり寄ったりだと思うがな」
 まあ、いまは例外的なようだが?――赤司がそう付け加えると、黒子は時間差でじわじわと白い顔を紅潮させた。
「んっ、あ、あっ……! あ、その……赤司くん……」
 高い声を短く上げながら、黒子が切羽詰まった声音と縋るようなまなざしを赤司に向ける。それが意味するところは明白だ。赤司は小さくうなずく。
「ああ、我慢することはない、そのまま出していい」
「いえ、そういうわけには……。赤司くんの手、汚れてしまいます」
「構わない」
「で、でも……っあ、ああっ……ふっ……!」
 搾るような強い圧が衝撃となり、下のほうに溜まっていた熱が解放される。赤司がうまく手でカバーしてくれていたので、飛び散ることはなかった。ただその分、彼の手をべっとり汚す結果にはなったのだが。脈打つそこをいましばらく押さえた後、
「大丈夫そうだな」
 赤司はようやく手を引いた。と思うと、テーブルからティッシュ箱を取り、疲労でぼんやりする黒子に断りも入れず、さっさと後始末を済ませた。
「少し腰を浮かせるか。衣服を正したい」
 黒子は答えなかったが、指示には素直に従い、赤司の首に腕を掛けて支えてもらいながら、わずかに腰を上げた。下ろされていた下着とハーフパンツが元の位置に戻される。
「痛くなかったか?」
「だ……大丈夫、です」
 まだ少し乱れた呼吸の中、黒子が答える。腕はまだ赤司の肩に回ったままで、体重をうまく支えきれずぐったりしている。上半身が前方に傾き、赤司の肩口にことりと頭がもたれかかる。
「動けないか?」
 射精後の心地よい疲労の中で弱い睡魔に襲われかけていた黒子だったが、赤司の声にはっとする。
「す、すみません、なんか甘えたことしてしまって」
「いや、疲れるのは当然だ。しばらくこのままでも構わないが」
「いえ、もう平気です」
 黒子はゆっくりと腕を解き、壁に上半身を預け、すっかり崩れた姿勢で床に脚を放った。なんだかとんでもないことをしてしまった――というかさせてしまった――と感じるのに、体はすっきりしていることに、現金なものだと胸中で苦笑が漏れた。
 その後赤司は一度手を洗いに部屋から出ていったが、すぐに戻ってきた。どうやって顔を合わせようかと思い悩んでいた黒子だったが、赤司は先刻のことには触れず、いつもどおりの会話が再開された。揶揄もなければ心配の言葉もない。感情が読めないのはいつものことだ。黒子としても、彼と性的な話題を弾ませるなんて無理だと感じていたので、もやもやしたものを抱えながらも日常の会話に乗った。そうしているうちに自分なら忘れてしまうだろうと思って。しかし、白昼夢のような出来事が頭の中でちらつき、集中できなかった。
 三十分ほど経過し、母親が帰ってくる気配がした。あ、お母さん出かけていたんだ、と黒子が物音のする方向へ注意を向けた。とりあえず、あの行為を施されている最中に親がいなかったことにいまさらながら安堵する。そして次に、赤司ならそのあたりのへまはしないだろうと考え――もしかして彼は留守中自分をひとりにしないために長居してくれていたんだろうかと思い当たる。彼がいつここを訪れたのか覚えていないが、少なくない時間が経過しているようには思えた。問うように目線を投げるが、赤司はそれを受け取らず、最近のニュースに関する解説を続けた。これは黒子のためというより赤司の趣味なので、黒子は特にメモを残さなかった。多分、いま解説に使っているレジュメをあとで渡されるだろう。
 さらに半時間が経った頃、そろそろお暇するよと赤司が腰を上げた。玄関まで見送ろうと黒子も立ち上がりかけるが、赤司に制止される。黒子は素直に従い、このまま部屋で別れの挨拶を済ませることにする。
「あの、今日は、ありがとうございました。……お礼言うのも変な感じしますけど」
 もじもじしながらそう告げる黒子に、赤司はちょっと意地悪げににやりとした。本日の訪問そのものへの礼と解釈できなくもないが……
「なんだ、覚えていたのか」
 黒子の様子から、何についてのありがとうございましたなのかは察しがつく。が、多少意外でもあった。黒子の記憶の保持期間からすれば、忘れている頃合いなのに。
「あ、あんな衝撃的なこと……! びっくりしすぎてさっきから頭の中ずっとぐるぐるしてるんですよ、どうしてくれるんですか」
 この一時間ほど、あのことが気になって仕方なかったらしい。まあ、いたずらをして怖がらせたという状況ではないので、たいしたことはないだろうが。
「そうは言っても、一晩寝ればきれいさっぱり忘れるだろう。それにどうせもう、細かいことは覚えていないだろう?」
「そりゃ……多分そうだと思いますけど。……もしかして、僕がどうせ忘れるから何してもいいやって思ってます?」
「そういうわけではないが。別に覚えててもらっても構わないぞ? おまえをいじめる気なんてないから、悪いことをしたとは思っていないしな。……ああ、うっかり刺激したのは悪かったかな?」
 ふ、と演技っぽく口角をつり上げて見せると、
「……いじめてるじゃないですか」
 黒子が苦笑交じりの大きなため息をついた。まったく仕方がないですね、と言うように。赤司もつられるように苦笑めいた息を漏らす。
「すっきりしたか?」
「は、はい……。その……気持ちよかった、と思います……」
 目を泳がせながらも率直な感想を述べる黒子に、赤司は荷物を手に立ち上がると、
「気にしなくていい。僕が原因だったわけだし。……何なら次もつき合うが?」
「え」
「まあ気が向いたら言ってこい。やぶさかではないから」
 意味深長な言葉を残し、それではこれで、体に気をつけて、と挨拶をしてから去っていった。
 どういう意味だろうと黒子は少しだけ悩んだが、久しぶりの処理で疲労を得た体ではあまり頭が回らず、そのうち忘れてしまった。

つづく



 

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