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『黒子のバスケ』の二次創作小説置場。pixivに投稿した作品を保管しています。腐向け。主なCPは火黒、赤降。たまにシモいかもしれません。

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赤司パパと降旗お兄ちゃんの幸せ家族無計画 2

 無邪気ではないかもしれない二匹の戯れをしばらく眺めたあと、降旗は枕元の目覚まし時計に視線をやり、もうそんな時間かと手をぽんと叩いた。時刻は正午を過ぎていた。
「征くんご飯まだだよね。俺いまから昼飯つくるけど、一緒につくっちゃっていい? あ、ちなみにうどんね。征くん調子悪いかもと思って、胃にやさしそうなメニューで。ほかのがいい?」
 じゃれあうコウとセイを赤司に任せ、自分はキッチンに行こうと降旗は腰を上げながら尋ねた。
「いや、うどんで。悪いな、ここ一週間ほどきみに料理させっぱなしだ」
「気にしないでよ。ここんとこ征くん、寝に帰るだけの忙しさだったんだから。もしつくってくれるなら、今日の夕飯一緒につくろ? それとも外食がいい?」
「家でつくりたい。はからずも外食三昧の日々だったし、この子らとも一緒にいてやりたいし」
「やったなー、パパ今日ずっとうちにいてくれるってさ」
 いっぱい甘えとけー、と降旗はコウとセイの頭をそれぞれの手で同時に撫でた。コウは飼い主の言葉に応えるように顔を上げて視線を寄越したが、セイはコウの腹の毛に夢中で、我が道を突き進んで熱心な毛づくろいを中断することなく続けている。降旗は苦笑しながら立ち上がり、寝室から出ようとしたところでひとりと二匹が陣取る布団のほうを振り返った。
「あ、そうそう、買い物ついでに炭酸買ってきたんだ。あんま好きじゃないと思うけど、シュワっとしたもの飲むと多少すっきりすると思って。飲む?」
「ああ、ありがとう」
「そうだ、征くんゆうべ結構お酒飲んでたから、お風呂入ってないよ? どうする、入りたい? 入りたいならお湯入れるけど」
 覚醒してからもずっと布団の内側で蓑虫を決め込んでいた赤司だったが、いい加減起き上がる頃合いかと、腕をつきのろのろした動作で上体を重力に逆らわせた。と。
「ああ、頼む。そろそろ起き上がらないと腰が痛くなりそうだ……し?」
 掛け布団が捲れひんやりとした外気が体表を襲ったところでぴくりと動きを止めた。やけに寒い。というか冷たい。いや、本格的な冬期はすでにはじまっているのだから寒冷であるのは当然なのだが、その感じ方がいつもと違う。ひどく直接的なのだ。赤司は無言のまま自分の体を見下ろした。日焼けしていない肌色が広がっている。裸だった。少なくとも上半身は。熱帯夜の厳しい夏ならともかく、真逆の季節に、なぜ。全裸健康法の実施はしていないはずなのだが。
 はっきりしない言葉尻で沈黙に陥ってしまった赤司を訝るように降旗が首を傾げる。
「征くん?」
 どうかしたの、と尋ねる視線はシンプルで、含みなど感じられないものだった。彼は赤司の現在のナリにまるで動じていない。赤司はなおも沈黙を守ったまま、掛け布団と毛布をそっと捲って中をのぞいた。案の定、脚も剥き出しだったが、下着はきちんと身に着けていた。彼は左手をこめかみに添え、何度か首をひねった。前夜アルコールでふらついた体で帰宅したことは覚えているので、現在の状況から、自分が眠っていると思っていた間に何があったのか見当はつく。が、記憶を探るものの、目的のものは出てこない。たっぷり一分ほど黙り込んだ末、彼はぼそっと降旗に尋ねた。
「もしかして、ゆうべセックスしたか?」
 降旗は気まずそうに視線を逸らしながら歯切れ悪く答える。
「あー……うん。したよ? 覚えてないと思うけど」
「……何かやらかしたか?」
「え? い、いや、別に……いつもどおりだったよ?」
「それは飲酒時における通常運転という意味か?」
「うん、まあ……」
 降旗のテンションは平坦なものなのだが、なんとも言えず居心地の悪い空気が二人の間を流れる。赤司は額に手を当てがっくりとうなだれると、布団の上に座ったまま露骨に陰を背負いはじめた。ものすごく憂鬱そうなその姿に、降旗が慌ててフォローを入れる。
「お、落ち込まないでよ! 俺、酔った征くんも好きだよ? もちろん普段の征くんが一番だけど、たまにだったら、酔っ払うのも別に……」
 口を開いたはいいが、ゆうべの出来事についてばっちり記憶が残っている降旗としては、それを言葉に出すと顔に朱が差してしまう気がして、知らず語尾を濁らせてしまう。どうしよう、なんて続けよう、と考え口をぱくぱくさせていると、赤司がやけに長いメランコリー満点なため息のあと、顔を上げた。その面はすっかり青ざめている。
「……ちゃんと合意だったか?」
「もちろん! それはばっちりだから心配しないで。最近忙しくてあんまりいちゃいちゃできてなかったから、久しぶりにたっぷりベタベタできて嬉しかったよ」
「そうか……」
 降旗のポジティブな回答を受けても、赤司はなお沈んだ面持ちで気の重そうなため息を繰り返していた。降旗は寝室に戻り洋服ダンスを開けると、赤司の部屋着を出してやった。衣服を渡された赤司は素直にそれを身につけたが、その動きは普段の彼からは想像もつかないくらいとろく、心ここにあらずといった印象だった。着衣を済ませた彼はふらふらと立ち上がると、トイレに行き、続いて洗面所で洗顔やうがいをした。降旗はダイニングのテーブルに置いたマイバッグの中からサイダーの缶を取り出すと、そうっと洗面所を除いた。首から上にまるっと冷水をぶっかけたらしい赤司が(寝癖直しのためにたびたびこんなことをするのだが、今日はそのためだけではないだろう)、タオルで髪を拭いている。緩慢な動きの彼のそばに寄ると、降旗はサイダーの缶を開けて渡してやった。まずはリフレッシュしようとばかりに。赤司が缶の中身を数口飲んだところで、降旗は顎のあたりで簡易な合掌をしながら彼をのぞき込んだ。
「ご、ごめんね? 多分俺が嫌だって言えば征くん酔っててもストップしたと思うけど……嫌じゃなかったっていうか、むしろ乗り気で、俺のほうも征くんとセックスしたいなって思ってたから、その……俺が誘ったみたいなとこもあるし?」
 言いながら赤司の手から缶を奪うと、降旗は彼の唇に自分のそれをねっとりと押し付けた。アルコールの魔手からは解放されたものの、酔った翌日のエンジンのかからなさを絶賛味わっていた赤司は、降旗の行動に驚いたのか少々身じろいだ。しかし唇は条件反射のように薄く開き相手の舌をちろりとくすぐった。赤司頭髪に残る水分が房となった毛先に集まり、水滴となってぽたぽたとふたりの体や床を打つ。ついさっき口に含んだばかりのサイダーの甘さが残っており、降旗の舌に文字通りの甘い刺激としてやんわり染み渡った。深く貪ることはせず、どちらからともなく顔を離した。
「ん……。ね、征くん、今夜はうちでゆっくり過ごせるよね。ゆうべも楽しかったけど……その、もっかいちゃんと、酔ってない征くんといちゃいちゃしたいな」
 目線を逸らしもじもじとねだる降旗。赤司は、もう一回というように降旗の唇に顔を寄せた。が、触れ合う寸前で接近を止め、焦点の合わない近さのまま、熱い呼気でささやいた。
「夜まで待てるか?」
「う……少なくともコウの散歩を終えるまでは我慢しないと?」
 むちゅ、とちょっとわざとらしい音を立てて唇を触れ合わせたところで、とりあえずご飯にしようと降旗は踵を返した。ついてこようとする赤司に、ちゃんと髪乾かしてと肩越しに告げるのを忘れることなく。
 小口切りのネギと削り節だけがトッピングのシンプルな月見うどんを昼食――赤司にとっては朝食だが――にとったあと、片付けはもうちょっとあとにして、と無言の了解の中、ちょっぴり久々に食卓で対面する時間を楽しむ。食後の一服用に緑茶の茶葉を替えて淹れ直す。お揃いの湯呑みから湯気とともに立つ茶の香りを軽く吸い込みながら、降旗がふと寝室の扉の隙間に視線をやった。
「そういやあいつらこっちに来なかったね。いつもなら物欲しげに食卓をじーって見つめるのに。朝からずっと起きてて眠くなっちゃったのかな。あいつら一日二十時間寝る勢いだからなあ」
 今日はパパが起きるのずっと待ってただろうから。あいつらにしては起きすぎだよ。そんなことを呟きながら降旗は湯呑みの中身をすすった。赤司は淹れたての茶をほんの少し喉に通したあと、
「寝てしまったなら毛布を掛けてやらないとな。二匹とも座敷育ちで寒さに弱いから。コウは年だから健康には気をつけなければ」
 立ち上がってリビングに行き、サークルの天板の上に置かれた毛布を手に取ると、寝室へと向かっていった。パパなんだかんだで面倒見いいよなあ、と降旗は彼の背を微笑ましく見つめた。そのまま二匹の様子をうかがいに寝室へ入ると思われた赤司だが、人ひとり通過できる程度に引き戸を開いたところで動きを止めた。最初、気配に敏感な動物に気を遣っているのかと解釈した降旗だが、どうも赤司の雰囲気がおかしいことに気づき、椅子から腰を上げた。寝室の戸の前で立つ赤司は、動きを止めたというよりも、不可抗力的に止まった、むしろ固まったといった印象なのだ。
「征くん……?」
 どうしたんだろうと声を掛けるが、赤司からのリアクションは帰ってこない。怪訝に思いつつ戸の隙間に上半身を差し込み室内を見回す。と、敷きっぱなしの布団の上でいまだじゃれあうコウとセイの姿が目に止まった。彼らは人間が寝室を去ったときと同じように、いまだ重なり合って毛づくろいをしていた。ただ、いつものコースを終えたということなのか、あるいは動物なりのサービス精神が働いたのかは定かではないが、普段ならやらないような――少なくとも飼い主が目撃したことのないような――場所までがっつり毛づくろいを行なっている。セイが、仰向けのコウの後ろ脚の間に頭を置き、性器の包皮に細かく生える毛を熱心に舐めている。コウはさすがに落ち着かないのか、首を持ち上げてちらちらセイの姿をうかがいつつ、宙に浮いた後ろ脚をときおり小さくばたつかせている。大変仲睦まじい光景である。仲良き事は美しき哉。……微笑ましく感じないのはなぜだろうか。かわいいワンコとニャンコのじゃれあいだというのに。
 ほかの肉食獣の前で腹丸出しにするなんて、これだから座敷犬は……と降旗がなかば現実逃避気味な感想を浮かべたとき、
「光樹……」
「な、なに? 征くん」
 感情のうかがえない、というよりどこかうつろな赤司の声に呼びかけられ、降旗はぎくりとあからさまに首をすくませた。赤司は揺れる瞳で降旗を見ると、いまにも全身震え出すのではないかと心配になるくらい唇を戦慄かせた。
「この子たちのじゃれあいを見てオーラルセックスを連想する僕は、まだアルコールが抜け切っていないのだろうか……?」
 なんだこれどういうことなんだ。彼らはどうしてしまったんだ。赤司がすがるように降旗の両腕を握ってくる。かつてない動揺を見せる赤司の背を降旗はなだめるようにさすってやった。
「お、落ち着いて? 動物のすることだから、他意はないはずだよ」
「……だよな」
 赤司の狼狽を治めるためにペットたちの無邪気を主張したものの、実のところ降旗は自分の発言内容を甚だ疑わしく感じていた。他意……めちゃくちゃありそうなんだけど。こいつら、っていうかセイのやつ、コウ相手に再三セックスごっこやらかしてるんだもん。
 犬猫にオーラルの概念があるのかは知らないし、ほぼ全身毛皮で覆われた動物なのだから、毛づくろいの延長でそのあたりにベロが向くことももしかしたらあるのかもしれない。動物のコミュニケーションを性的な方向に結びつける人間の想像力がおかしいのだと思わないではなかったが……一瞬動きを止めてどこか牽制の色を含む瞳でこちらを一瞥してくるセイや、たまにびくんと後ろ脚を震わせるコウを目の当たりにすると、やはりそっち方面の連想は避けられない降旗だった。しかしここで正直にそれを告げたら、赤司はショックのあまり倒れてしまうのではないか。本気でそんな心配をするくらい、彼はだらだら汗を垂れ流さんばかりに狼狽している。
 これ以上は見せられないよとばかりに、降旗は赤司の頭をぎゅっと抱き締めた。

*****

 結局あのじゃれあいはペットたちの微笑ましい一幕だったと無理矢理納得した赤司は、夕刻、気を取り直して約束通りコウの散歩に出かけていった。冷え込みがきつかったので、コウは昨年赤司が手ずから制作した犬用の服を着せてもらっていた。セイもときには一緒に散歩に連れて行ってもらうのだが、この日は外の寒さに負けて家の中でぬくぬく過ごすことを選んだようだった。赤司とコウが外に出ている間、降旗は湯たんぽ代わりにセイを膝に乗せ、携帯で黒子に電話をしていた。題目はもちろん、うちの子の相談、である。
『はあ。コウくんとセイくんがフェラを』
 ペットたちの状況についてたびたび電話での報告やら相談やらを受けている黒子は、別段驚いた様子もなくいつもどおりの淡々とした声音で降旗からの話を簡潔にまとめた。
「うん……。それがさぁ、前の日の夜、酒の入った赤司が俺にめっちゃサービスしてくれてたんだよ。あいつ酒癖悪いっていうか、酔っ払うと俺の体いじり倒す癖があるんだよ……」
『ええ、知ってますよ。酔った赤司くんに一晩中体をいじくり回されて、翌朝焦れて泣いちゃってる降旗くんを目撃したのは悪い思い出です。赤司くんはぐーすか寝ちゃってるし、降旗くんはエロいことになってるしで、ぎょっとしましたよ』
「その節はスミマセンでした……」
 数年前の思い出を持ち出され、降旗は顔から火の出る思いだった。
『まあその話はあまり掘り返さないでおきましょう。僕としてもあんまりタッチしたくない思い出ですから。で、さっきの話ですけど、きみたちがゆうべいちゃこらしているところをコウくんたちが見ていたと?』
「俺も夢中っていうか必死だったから、そのときあいつらがどうしていたのかはわかんないけど……もしかしたら目撃されてたかも? と思って」
『動物なんですから、体舐めるついでに性器やその周辺を舐めてもおかしくはないと思いますけど』
「そうだけど……なんかやけに執拗に舐め回してる気がして。コウは脚ピクピクさせてるし」
『どちらも嫌がってはいないんですね?』
「いつもどおりいちゃいちゃしてた。まあ、コウは動くのが億劫なのか、どうにでもしてとばかりに仰向けでぐてっとしてて、セイが熱心にペロペロしてたんだけど」
『なるほど、飼い主の縮図ですか』
「俺はマグロじゃないってば。その……ゆうべは赤司のやつが一方的に舐めたがったから仕方なく……。俺もしてやりたかったのに」
 もじもじと恥ずかしげにぼやく降旗に、電話の向こうで黒子が盛大なため息を漏らす。
『きみたちの夜の営みは聞きたくないんですが』
「飼い主のセックスって、ペットの情操教育に悪いのかな……」
 深刻そうに呟き頭を悩ませる降旗とは対照的に、膝の上の猫は呑気に惰眠を貪っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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