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『黒子のバスケ』の二次創作小説置場。pixivに投稿した作品を保管しています。腐向け。主なCPは火黒、赤降。たまにシモいかもしれません。

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赤司パパと降旗お兄ちゃんの幸せ家族無計画 1

赤司くん誕生日おめでとうだけど誕生日ネタにならなかった話。「ビーストラブ!」と同じ設定です。同棲赤降とそのペットたち。リア獣BLで、オス猫×オス犬のイチャラブ?があります。なお二匹とも去勢オスです。




 カーテンの隙間から角度の浅い陽光が差し込む。すでに日が高い。窓枠のかたちを基本に畳を照らす太陽の眩しいばかりの光は、しかし冬の冷えた室内を暖めるには不十分だ。体を挟む厚手の布団からひとたび抜け出せば、途端に肌寒さが手足の先や耳、鼻を襲うだろう。だが布団から出る気にならないのは寒さだけが理由ではない。むしろ別の要因がある。全身を覆う圧倒的なだるさが、体を起こす気力さえ奪っている。休日とはいえ正午近くまでだらけて過ごすことは珍しい。らしくないと承知しつつ、けれども仕方がないと赤司は胸中で嘆息した。不調の原因は明白だ――職場のつき合いの必要で飲酒したせいだ。極端に酒に弱いわけではないが、強くもない。また好きではない。アルコールによってもたらされる酩酊が確実に自分の思考力や理性を低下させるのを実感するのは彼を落ち着かない気分にさせ、よい気持ちで酔うことができない。それでも人前や外部では思考力の低下に抗い平静を装っていられるが、体に酔いが回ることまで大脳で抑制することはできない。だから外で一定量を超えて飲酒した夜は、プライドと根性によってつとめて普段通りの表情で帰途に着くのだが、自分のプライベートの空間、すなわち自宅にたどり着いた瞬間、緊張の糸が切れたとばかりにふらふらになる。ゆうべ帰宅したとき、大丈夫かとしきりに心配する降旗の声が幾度となく響いていたのを覚えている。が、そこまでだ。多分眠ってしまったのだろう、気がつけば朝の十時過ぎ、寝室の布団に挟まれて仰向けになっていた。幸い二日酔いにはならなかったようで頭の中で下手くそなブラスバンドが奏でられることもなければ天井が洗濯機よろしくぐるぐる回ることもなかった。頭重はあるが頭痛はない。ただひたすら体が重くだるい。ぼんやりする頭で横を見れば、ダブルの布団の隣はすでに空で、代わりに枕元に別の同居相手がちょこんと座っていた。ペットとして飼っている老犬コウだ。彼は赤司が目覚めると、まずは心配そうに顔をのぞき込みくんくんとにおいを嗅いだ。赤司が寝返りをうち横向きになると、コウはそちらに回り込み、嬉しそうにぱたぱたと尻尾を振った。降旗の実家にいるときからすでに座敷犬として躾けられていたようで、余程のことがない限り布団には乗ろうとしない。赤司はコウの頭をよしよしと撫でた。
「コウ、すまないな、パパは今日少々具合が悪い。散歩はお兄ちゃんに行ってもらうんだ。お兄ちゃんは買い物か?」
 コウの散歩は飼い主である降旗が担当することが多いが、休日は赤司が連れていく習慣になっている。コウは昼の時間まで赤司がいる=休日という認識を持っているらしく、休日だとわかると赤司に散歩をねだる。この場合、降旗が連れて行こうとしてもコウはあまり喜ばず、ちょこちょこと控えめに赤司にまとわりつく。いつもなら行ってやるところだが、今日はアルコールの余波がまだ体を覆っており、外出できる気がしない。赤司は、自分が目覚めたのを喜び散歩の期待を膨らませるコウをなだめすかすように、体をさすってやった。コウは気持ちよさげにくーんと鼻を鳴らしたあと、畳にこてんと横たわった。年のせいもあり行動に少々怠惰なところが見えはじめているコウではあるが、脚を投げ出すことはせず、両の前脚を使って赤司の右手首を掴んだ。ナマケモノのような格好だ。
「甘えたいのか? 最近忙しくて構ってやる暇がなかったな」
 ふっと小さく息を吐くと、赤司はコウの顎の下を指の腹で軽く触れた。コウは緩慢な動きで赤司の腕にじゃれついている。と、音もなく別の気配がやって来る。赤司が飼う猫のセイだ。布団の足元にいたようで、赤司のつま先側から上半身のほうへと移動した。だがセイは主人には擦り寄らず、代わりに同じペットの立場であるコウの腹に前脚と顎を乗せた。コウはセイに腹を見せていたわけではないのでびくっと体を硬直させたが、赤ちゃん猫の頃から懐いてきたセイの行動にはさすがに慣れており、すぐに緊張を解いた。
「セイ……おまえは本当にコウが好きだな」
 赤司は苦笑しながらセイの頭を指の背で撫でた。セイは気持ちよさそうに目を閉じ主人の手を受け入れたものの、剥き出しの人間の皮膚よりは犬の腹の柔らかい毛が好みのようで、相変わらずコウに擦りついたままだ。偶然か意図的かは判別しかねるが、コウの左前脚がセイの方に置かれる。するとセイは仰向けのコウの胸に頭を預け、コウはセイの体を前脚で抱き寄せるような格好になった。人間が仲良く抱き合っているかのような状態で、セイがコウの毛づくろいをはじめる。まったくもって仲のよいことだと、赤司は布団に転がったまま彼らの行動を微笑ましい気持ちで眺めていた。と、二匹がほぼ同時にぴくりと耳を動かす。やや遅れて玄関のほうから物音が聞こえ、続いてただいまーという人声が届く。コウはセイの下から脱出すると、尻尾を振りながら寝室の扉の隙間を潜っていった。キッチンで何やらがさごそ音がし、コウのキュンキュンという甘えた声が響く。「はいはい、お兄ちゃん帰ったよ。そうかそうか、嬉しいか。いい子にしてたか? パパまだ起きてない?」扉越しに降旗の声。赤司は、コウに取り残されちょっぴり不満そうな様子のセイの背中をなだめるように撫でてやりながら、降旗とコウのやりとりを聞いていた。と、引き戸の隙間から降旗の顔がにゅっと伸びる。
「セイはパパのとこにいたのか。いい子にしてたか?」
「光樹か。おかえり」
「あ、征くん起きてたんだ。大丈夫? 頭痛い?」
 降旗が赤司の枕元まで数歩歩いて移動する。コウは付き従うようにその横を歩き、赤司のところまで戻ってきた。赤司は枕に頭を預けたまま、目線で降旗を見上げた。
「いや、二日酔い的な症状はない。体は重くてだるいが、頭痛や吐き気はない」
 赤司が、横向けていた体を再び仰向けに戻し、布団の下から腕をちょこっと出し、前髪を軽く掻き上げながら気だるげにふうっと息を吐いた。単に身体的に調子が上がらないだけの様子と仕草だが、なんともいえないコケティッシュな雰囲気を醸しており、降旗はどきりとした。ゆうべのこの部屋の空気を思い出し、降旗はカッと頬が熱くなるのを自覚した。
「ま、まあ……疲れてるだろうしね?」
 コホン、と小さく咳払いしてから、降旗は自分の飼い犬に手招きした。
「コウおいで。パパ調子悪いから、休ませてあげて? ごめんね征くん、コウのやつ、最近パパに散歩行ってもらってなかったから、今日こそはって感じで一緒に行きたいみたいなんだ。俺が誘ってもテンション低いままで気乗りしない様子でさー、今日はまだ散歩行ってないんだ」
 降旗は赤司の横で胡座をかくと、素直に自分のほうに寄ってきたコウを膝に乗せた。主の組んだ足の間に収まったコウだが、目線は未練ありげに赤司のほうを向いている。
「コウ、散歩行きたいのか。行ってやりたいが……もう少し休みたいんだ。夕方になるけどいいか?」
 耳を後方に倒したコウがきゅうんと甘え声を立てる。伏せて丸まっているので動きがわかりにくいが、尻尾は左右に振られている。すかさずセイも降旗の膝に乗るが、コウは小型といえど柴程度の大きさはあるため、若干定員オーバー気味だ。しかしそこは慣れたもので、セイはコウの上に重なり合うようにして体を置いた。
「もしかしてコウ、ずっとここで待っていたのか? 僕が目を覚ましたときにはすでにいたんだが」
「うん。九時過ぎてもパパがうちにいるもんだから、今日は休みだってわかったみたいで、早く起きないかなってそわそわしてたんだ。買い物行く前にサークルに入れていこうとしたんだけど、征くんの枕元から動こうとしなくて。元々そんなに要求吠えもしないから、大丈夫かなって思って、そのままにしておいたんだ。パパが具合悪いのわかるみたいで、静かにしてたよ。散歩の催促ってよりは、心配でそばにいたかったのかな」
「そうか。コウ、心配させて悪かったな。セイも、コウが静かにしているせいかあまりじゃれつけなかったようだし」
 セイはようやくいちゃいちゃできるとばかりに先程から熱心にコウの毛づくろいをしている。だがコウはやっと起きる気になったらしいパパのほうに気を取られており、セイのことは動く置物のようなスルーぶりである。何かを訴えるように瞳をうるうるさせるコウに赤司は微笑みかけると、とんとんと布団を軽く叩いた。乗ってよしの合図だ。コウは降旗の膝から上体を伸ばして前脚だけを布団の上に置くと、横向きに寝たままの赤司の口元をぺろぺろと舐めた。赤司はコウの首輪周りを撫でさすって応えてやる。と、ふいに手の甲に固いものが当たる。セイが恨めしそうなまなざしを向けながら、赤司の手にごく軽い猫パンチを食らわせたのだ。爪は立てていないので被害はない。セイは本気を出すことこそないが、大胆にも飼い主に攻撃を繰り出すことがある。あの赤司に歯向かうなんて、と降旗は最初ひやひやしたものだった。幸いそこまで大人気なくはなかったようで、赤司は反抗期の子供をあしらうようにときにセイをたしなめ、ときにからかって遊んでいる。
「なんだセイ。コウを返してほしいのか」
 赤司は飼い猫に向かってにやりと口の端をつり上げてみせると、見せつけるようにコウを自分のほうへ抱き寄せた。猫と違い犬は群れ行動、序列社会が基本のためか、リーダー(飼い主は降旗だが、コウの認識では家長は赤司である)に絶対服従のコウは、呼び寄せられたことを喜ぶようにますます激しく赤司の顔を舐める。パパ大好き、と聞こえてきそうな勢いだ。赤司のいじわるがむかついたのか、セイは赤司の手にぱしぱしと連続で猫パンチをお見舞いした。
「征くん、あんまセイをいじめないであげてね。機嫌損ねると面倒くさいんだから」
 セイ相手だと変に子供っぽい態度をとる赤司にため息をつく降旗。フーフー言いながら赤司の手に攻撃を仕掛けるセイの背に触れながら、
「セイ、パパが寝ているとき、枕元のコウに抱きついたりしてちょっかい掛けてたんだけど、コウにたしなめられておとなしくなったんだよ。そのあとは多分静かにしてたと思う」
 だからもうちょっとコウといちゃつかせてあげてよ、と猫の肩を持つ。
「そうなのか。セイは人間よりコウの言うことのほうがよく聞く気がするな」
「動物同士のが通じやすいのかもね。一緒にいる時間も長いし」
 赤司に再び腹を見せ撫でてもらっていたコウに、セイがそろりと忍び寄る。そして腹部の毛に顔を埋めたかと思うと、その状態のまま布団の上に伏せた。口はコウの毛を軽く噛んでいるようである。コウはセイにされるがまま仰向けを保ちつつ、困ったような視線を人間ふたりに注ぎはじめる。すでに見慣れた光景に、赤司と降旗は顔を見合わせながらため息をついた。
「セイ……いい加減コウのおっぱい探すのやめなよー。コウは乳出ないし、第一セイ、おまえもうそんな年じゃないだろ。大人だろ?」
 そう、セイの妙な動きは、コウから乳をもらおうとしての行動なのだ。もちろんオスのコウに乳など出るわけないし、そもそも口に含めるほどの大きさの乳首さえないのだが……
「子猫の頃から変わらないな、セイは」
「こいつ、うちに来た時点で乳離れしてたのに、なんでかコウの乳首探そうとしてたよなあ」
 子供の時からの習慣として、セイはコウの腹に顔を埋め乳首を探そうとするのだ。メス犬が他種の動物の子の養母になる例は多数知られており、もしコウがメスだったら、種は違えど小さな子猫に母性愛を示すこともあったかもしれない。出るか出ないかは別として、授乳行動が出現した可能性もある。が、コウはオスで、なおかつ人間の成人にばかり囲まれて過ごしてきた犬なので、乳を求める子猫の行動に困惑し怯えるばかりだった。セイのあまりのしつこさというか執念深さにいつしかコウは諦め、悟ったような目つきで体を倒して腹部を見せ、セイに授乳もどきをしてやるようになった。といっても面倒くさそうに寝そべっているだけであるが。もともと授乳の必要も意義もなかった謎の行動は、どういうわけか成猫になっても消失せず、現在もときどき出現する。
「あの時期はコウが怯えてサークルに立てこもってしまっていたな」
「犬のオスの乳首なんてほとんどわかんないのに……よくやるよ」
 乳を求める以外にも遊んでくれとじゃれつき追いかけてくる子猫から逃げ惑っていたセイは、最後の砦とばかりに自分のサークルの内側にこもって出て来なくなってしまったのだが、少しの時を経ていくらか体が成長したセイはネコ科の瞬発力に物を言わせサークルの柵をいとも簡単に飛び越えてしまい、あっさりコウの安全地帯に侵入を果たした。助けを求めるコウの必死の鳴き声にいたたまれなくなったふたりは、急いで夜のホームセンターに出掛け、天板付きのサークルを購入してやった。それでも柵越しにセイは遊んで構って攻撃をコウに出し続けた。その甲斐あってか、臆病きわまりないコウも次第に子猫に慣れて打ち解けるようになり、飼い主たちはほっとしたものである。……まさかこれほどまでに仲良しになるとは思いもしなかったのだが。
 コウの腹に幸せそうに顔を埋めるセイと、なんだかんだで満更でもなさそうなコウの姿を見下ろしながら、降旗はふと、これ人間に置き換えたらアレな光景だよなあ、なんて考えてしまった。それと同時に昨夜の、いや今日の早朝までの一連の記憶が想起されかけ、またしてもひとり勝手に頬を紅潮させかけた。
「どうした光樹」
 不思議そうに尋ねる赤司の顔を、降旗は直視できる気がせず、かわいいペットたちに視線を固定させたまま取り繕う。反射的に自分の胸元を腕で隠すような動きをしながら。
「い、いや……なんかこいつらの仲の良さって、見てるとちょっと恥ずかしくなってくるなあって」
「そうだな。まったく、いつまで子猫のつもりでいるんだろうな、セイは」
 いやー、むしろこれは大人の男のつもりで行動してるんじゃないのかな――降旗は胸中でそう呟いたが、口には出さなかった。大人になっても乳首を求める行為は行われるものだと知らないうちに彼らに教えてしまった(かもしれない)生き物は、いったいどこのどいつだろうか?

 

 

 

 


 

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